大阪府例規集の「私立学校」の節が空っぽである件について

森友学園を巡る話題に関連していろいろ調べていたときに、大阪府例規集から私立学校関係の例規が削除されていることを知った。正確な日付はわからないが、インターネットアーカイブで調べると昨年4月以降に削除されたようで、それ以前には次の3項目があった。

  • 大阪府私立学校法施行細則 ◆昭和25年6月12日 規則第40号
  • 私立学校法第二十六条第二項の規定に基き、学校法人等の行うことのできる収益事業の種類 ◆昭和26年2月12日 告示第61号
  • 大阪府私立通信制高等学校等における適正な教育条件を確保するための指導指針 ◆平成12年11月21日 告示第1979号

大阪府公報を検索してみると、大阪府私立学校法施行細則は昨年3月30日の大阪府私立学校法施行細則を廃止する規則(規則第68号)〔PDF〕で廃止されていた*1。2つの告示も3月31日限りで廃止されている。
大阪府私立学校法施行細則の廃止理由については、

知事の権限に属する事務のうち私立学校に関することを教育長に委任することにより、大阪府私立学校法施行細則を廃止します。

とされている。告示の廃止理由も同じだろう。
この権限委任は、事務の委任について(公告第26号)〔PDF〕で公告されているのだが、これがまた非常にわかりにくい。

知事の権限に属する大阪府処務規程(昭和28年大阪府訓令第1号)第6条第2項第1号に掲げる事務を、平成28年4月1日から教育長に委任する。

大阪府例規集に掲載されている現行の大阪府庶務規程第6条第2項は財政部行政改革課についての規定で、これは上の公告の内容とは全く関係ない。権限を委任する際に大阪府庶務規程も改正されているからだ。改正前の大阪府庶務規程第6条第2項第1項を参照しなければならないのだが、幸い大阪府処務規程の一部改正(訓令第7号)〔PDF〕は新旧対照表なので改正前の文言がわかる。第6条は府民文化部に当時存在した私学・大学課についての規定で、第1項は「私立学校に関すること」だ。
これで大阪府私立学校法施行細則(と2つの告示)が廃止されたいきさつは確認できたが、ここで疑問が生じる。廃止された規則に規定されていた事務は教育長に継承されているのだから、たとえば「大阪府教育庁私立学校法施行細則」というような題名の規則が新たに制定されているべきではないのか? だが、そのような規則は見当たらない。
教育長には規則制定権がないので制定しようがないのだ、とも考えられる。知事にはもちろん規則制定権があり*2教育委員会にも規則制定権がある*3のだが、教育長は教育委員会の代表者とはいえ、独立した執行機関ではないので、法令上は規則が制定できるという明文規定はない。知事の権限に属する事務の一部を教育長に委任できる*4のだから、私立学校に関する規則制定権も教育長に委任できるのではないか、という考えもふと浮かんだのだが、この辺りの解釈はよくわからない*5行政法に詳しい識者のご教示を待ちたい*6
教育長に規則制定権がないので新しい規則を制定できなかったのだとすれば、大阪府私立学校法施行細則を廃止しなければよかったのではないか。そもそも、知事から教育長へ委任されたのは、改正前の大阪府庶務規程に掲げられていた私学・大学課が取り扱う「私立学校に関すること」だけであり、私立学校に関することすべてが委任されたわけではない。私立学校に関する規則の制定・改廃は引き続き知事が行うこととすれば*7大阪府私立学校法施行細則を廃止せずにそのまま残しておけばよかったのではないか。
さころで、大阪府私立学校法施行規則にはどのようなことが書かれていたのか。廃止前のこの規則を大阪府のサイトで探すのは大変なので、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業のサイトから調べてみた。2016年5月12日現在のデータ*8。著作権の問題はないと思われるので、以下、全文を引用する*9

○大阪府私立学校法施行細則

昭和二十五年六月十二日

大阪府規則第四十号

〔私立学校法施行細則〕をここに公布する。

大阪府私立学校法施行細則

(昭六二規則六〇・改称)

(定義)

第一条 この規則において、「私立学校」とは、私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号。以下「法」という。)第四条の都道府県知事所轄の私立学校をいう。

(昭六二規則六〇・一部改正)

(学校設置申請手続)

第二条 私立学校設置の認可を受けようとする者は、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第三条に定めるもののほか次に掲げる書類を添えて知事に申請しなければならない。

一 趣意書

二 創立費並びに設置後二箇年間の事業計画及び収支予算書

三 校具及び教具の明細表

四 教職員組織表

五 学校付近状況図及び建物の構造を示す図面

六 校地、校舎及び寄宿舎の所有権を証する公の書類又は貸借契約書

七 校地の地質及び飲料水の定性分析表(上水道以外使用の場合のみ)

八 設置者の履歴書、身分証明書及び教職の適格を証する書類

九 理事会決議録、寄附行為、財産目録及び最近における事業の実績(法人経営の場合のみ)

十 資産証明(個人経営の場合のみ)

(昭六二規則六〇・平一二規則六・一部改正)

(授業の停止)

第三条 私立学校が一箇月以上授業を停止しようとするときは、設置者において次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。

一 理由

二 幼児又は児童生徒の処置

三 期間

四 理事会決議録(法人経営の場合のみ)

(昭六二規則六〇・平二〇規則六〇・一部改正)

(校長の採用解職報告)

第四条 私立学校において校長を定めたときは、設置者は、速やかに次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。

一 氏名

二 履歴書

三 専任兼任別

四 教職の適格を証する書類

五 教育職員免許状の写し

六 採用の年月日

2 校長を解職したときは、設置者は、その氏名、解職の年月日及び解職の理由を知事に届け出なければならない。

(昭六二規則六〇・一部改正)

(大阪府私立学校審議会の委員の定数)

第五条 大阪府私立学校審議会の委員の定数は、十八人とする。

(平一八規則一二〇・全改、平二〇規則六〇・一部改正)

(庶務)

第六条 大阪府私立学校審議会の庶務は、府民文化部において行う。

(昭四三規則五二・昭四九規則二九・昭六二規則六〇・一部改正、平一二規則六・旧第十条繰上・一部改正、平二一規則一〇・一部改正)

(私立専修学校等への準用)

第七条 第二条から第四条までの規定は、私立専修学校及び私立各種学校に準用する。

(昭四八規則五・旧第十一条繰下、昭四九規則二九・旧第十三条繰下、昭六二規則六〇・旧第十四条繰上・一部改正、平一二規則六・旧第十一条繰上)

附 則

この規則は、公布の日から施行し、昭和二十五年四月一日から適用する。

大阪府私立学校審議会委員の定数に関する規則(昭和二十五年大阪府規則第十一号)は、廃止する。

附 則(昭和三三年規則第五〇号)

この規則は、公布の日から施行し、昭和三十三年七月一日から適用する。

附 則(昭和四三年規則第五二号)

この規則は、公布の日から施行し、昭和四十三年八月一日から適用する。

附 則(昭和四八年規則第五号)

(施行期日)

1 この規則は、昭和四十八年四月一日から施行する。

(規則の廃止)

2 私立学校法施行令第五条の府の補助金を定める規則(昭和四十六年大阪府規則第一号)は、廃止する。

附 則(昭和四九年規則第二九号)

この規則は、公布の日から施行する。

附 則(昭和四九年規則第六四号)

この規則は、公布の日から施行し、改正後の私立学校法施行細則第六条の規定は、昭和四十九年七月一日から適用する。

附 則(昭和五〇年規則第七八号)

(施行期日)

1 この規則は、公布の日から施行する。

(経過措置)

2 昭和五十年度においては、私立幼稚園に対する補助金のみの交付を受ける学校法人に対する私立学校法施行細則第十二条第一項の規定の適用については、同項中「当該年度の六月三十日」とあるのは「昭和五十一年一月三十一日」とする。

3 私立幼稚園に対する補助金のみの交付を受ける学校法人については、私立学校法施行細則第十三条の規定にかかわらず、私立学校(昭和二十四年法律第二百七十号)第五十九条第九項後段の規定は、当分の間、適用しない。

附 則(昭和五一年規則第七六号)

この規則は、昭和五十一年七月一日から施行する。

附 則(昭和六二年規則第六〇号)

この規則は、昭和六十二年十一月一日から施行する。

附 則(平成一二年規則第六号)

この規則は、平成十二年四月一日から施行する。

附 則(平成一四年規則第七六号)

この規則は、平成十四年七月一日から施行する。

附 則(平成一八年規則第一二〇号)

この規則は、公布の日から施行する。

附 則(平成二〇年規則第六〇号)

この規則は、公布の日から施行する。

附 則(平成二一年規則第一〇号)

この規則は、平成二十一年四月一日から施行する。

一見したところ「……しなければならない」という、私人に義務を課す規定がいくつかあり、要綱とか要領では代替できず、規則として制定しておかなければならないように思われるのだが、今はどうしているのだろうか?
非常に気になることなので、大阪府教育庁私学課に問い合わせてみたいのだが、いま電話したら時節柄イタ電扱いされそうなので控えている。

*1:施行日は4月1日。

*2:地方自治法第15城第1項

*3:地方教育行政の組織及び運営に関する法律第15条第1項。正確には「規則」ではなく「教育委員会規則」。

*4:地方自治法第180条の2。

*5:事務委任は権限委譲ではないので無理、というふうに考えたのだが、さて……?

*6:こうやって問いを投げかけても滅多に回答が寄せられることはない。

*7:その場合、規則に加関する事務だけ知事部局のどこかの課で扱うというのはさすがにややこしいので、教育庁私学課に補助執行させることになるだろう。

*8:つまり大阪府私立学校法施行規則が廃止された後だが、内容は同年1月28日現在の例規集だ。

*9:ベタコピペでレイアウトの調整は行っていないが御容赦願いたい。

『東西ミステリーベスト100』発表年代別作品数


  • 使用データは東西ミステリーベスト100 - Wikipediaに掲載されていたものであり、元データとは異なる可能性があります。
  • 年代区分は旧版(1985)を基準として10年ごととしていますが、黄金時代以前は19世紀と20世紀初頭をそれぞれまとめて2区分としました。
  • この表とグラフをもとに、何か考察してみようと思っていたのですが、面倒になったのでやめます。

今年の目標

ここ数年、元日にその年の目標を立てることにしている。ただし、読書に関する目標に限る。なので、この記事のタグも「読書」にすればいいのだが、毎年「雑文」にしているので、今年もそうすることにした。
さて、去年の目標はこういうものだった。

  1. 連城三紀彦の小説を5冊以上読む。
  2. 海外ミステリを20冊以上読む。
  3. 小説でもマンガでもない本を10冊以上読む。

第1の目標は早くも3月に達成し、第2の目標は確か11月に達成した。第3の目標は(当初これがいちばん簡単だと思ったのだが)12月中旬にようやく達成した。小説ばかり集中して読んで、昨年は結局106冊も読んだので、その他の本があまり読めなかったのだ。
ともあれ、すべての目標が達成できる見込みが立った11月末くらいから、来年の目標をどうするか、ということを考えていた。いつもは年始に適当に思いつきで目標を設定しているのだが、考える時間が十分にあると、その分よけいなことばかり考えてしまって、なかなか決められなくなるものだ。たとえば、こんにことを考えた。

  • 本が増えて困るので購入冊数に上限を設けるのはどうか?
  • 積ん読状態を少しでも解消するために、5年以上前に買った本のなかから○冊読む、というような目標はどうか?
  • 連城三紀彦5冊以上という目標が比較的簡単に達成できたので、苦手作家の本を中心に読むのはどうか?
  • 海外物が弱いので、国内物と交互に読むというのはどうか?
  • ミステリばかりに偏っているので、初心にかえって、たとえばSFやファンタジーを集中的に読むのはどうか?
  • 小説を控えてマンガ三昧の1年にしてしまうのはどうか?

どうもしっくりこない。「ふだんの読書傾向から少し逸れるが、あまり大きくは外れない目標」でないと、真面目に取り組む気になれず頓挫してしまうのはわかりきっている。匙加減が難しい。
いろいろ考えてみた結果、「来年(というのは今年のことだが)は長い小説を読む年にしよう」と思い立った。そこで、年末に『模倣犯』と「〈ミレニアム〉三部作」を買ってきた。なぜこの2タイトルかというと、『東西ミステリーベスト100 (文春文庫)』[新版]で取り上げられている作品のうち、国内・海外それぞれの最長作品*1だからだ。文庫版では前者は5冊、後者は6冊もある。
これで今年の目標は決まった。
長い小説(文庫版で2冊以上のもの)を10タイトル以上読む。
先の2タイトルだけで11冊、残りの8タイトルをすべて2巻本としても16冊、あわせて27冊にもあるため、今年の目標はこれ一本で行こうと思う。
なお、ほかに考えているのは、たとえば『日本沈没』『魔界転生』などで、必ずしもミステリに限ってはいない。ただ、昨日『レベッカ』[新版]を買ってきたこともあり、やはりミステリ中心になるのではないかと思う。できれば新旧「東西ミステリーベスト100」の未読本を優先的に読みたいものだ。たしか『飢餓海峡』も文庫版では上下巻だったはず。
もっとも、あまり制約をきつくすると途中で息切れするので、今タイトルを挙げた作品は『模倣犯』と「〈ミレニアム〉三部作」を除き、すべて例示であり、目標には含まないということにしておこう。
さて、読めるや読めざるや?
結果は365日後に!

*1:あとで知人から「『半七捕物帳』も巻数が多いのでは?」と指摘を受けたが、『模倣犯』と比べてどちらのほうがより長いかは調べていない。あれは短篇集なので……。

驚天動地の……

これは凄いミステリだ。どう凄いかというと、どこがどう凄いのか説明できないくらい凄い。
感想文でこういう書き方をすると、たいていは叙述トリックを使っているものだ。叙述トリックは、それが使われているということを知らせるだけで未読の人に大きなヒントを与えることになるので、一切説明できない。説明できないものを無理矢理感想文に組み込もうとすると、こういう書き方になってしまうというわけだ。
だが、『スイーツレシピで謎解きを』の凄さは、叙述トリックにあるのではない。というか、この作品には叙述トリックは……いや、これ以上踏み込むのはやめておこう。とにかく凄い、とだけ言っておこう。
久々にこの日記を更新したのに、こんな内容のない読書感想文しか書けないのは残念だが、まあ仕方がない。

『分かれ道ノストラダムス』の感想

小説推理 2015年 09 月号 [雑誌]

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小説推理 2016年 06 月号 [雑誌]

小説推理 2016年 06 月号 [雑誌]

双葉社の月刊誌「小説推理」の昨年9月号から連載開始した深緑野分の第2長篇『分かれ道ノストラダムス』が先月末に発売された6月号で完結した。連載中、「小説推理」は毎号買ってはいたものの途中で積ん読状態になっていたので、今日、連載の最初から通しで全部読んでみた。
で、読了後すぐTitterで次のように呟いた。

今日はみどりの日なので、深緑野分『分かれ道ノストラダムス』を、最初から通して全部読みました。『分かれ道ノストラダムス』の少年少女は『オーブランの少女』の少女たちや『戦場のコックたち』の少年たちと並ぶ印象深さで迫ってきます。傑作。

深緑野分の過去の作品、特に『戦場のコックたち』を読んだ人が『分かれ道ノストラダムス』を読むと、全然雰囲気が違うことに戸惑うかも。でも、世界が綻び壊れていく中で必死にもがきながら生きていく人々を描いていて、決して自暴自棄にも厭世的にもならない逞しさが、深緑野分にはあります。

「傑作」と言うのではなく、傑作であることが伝わるような感想を述べるのがいいのだが、残念ながら『分かれ道ノストラダムス』が傑作たる所以をうまく言葉にすることができない。
で、他の人の感想文や書評を参考にしてみようと思って検索してみた。
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
あ、あれ?
『分かれ道ノストラダムス』の感想がヒットしない……。
よってこの感想文はこれにて終了!
……ブウウウ…………ンン…………ンンン…………。








気を取り直して、作者自身のコメントを引いておく。

『小説推理』さんで連載中の「分かれ道ノストラダムス」という、意味不明な小説があります。最初は恋愛小説というお題のはずだったのに、なんでこんな話になっちゃったんだろうっていう。

「意味不明な小説」とはちょっとひどい言い方だが、確かに出だしから中盤にかけては雲をつかむようなところがあって、去年の年末くらいには「この小説、この先どういう方向に進むのだろう?」と首を傾げたことを思い出した。特に連載第1回では平行世界の話題が出る一方で殺人事件が起こっていたので、これはSFなのかミステリなのか皆目見当がつかなかったくらいだ。
最後まで読み終えてみると、ジャンルすら不明なカオス(混沌)の中から徐々にコスモス(秩序)が立ち現れてくるという趣向もあったのではないかと思われるので、先に引用した「意味不明な小説」というフレーズは一種の韜晦ではないかと疑ってみたくもなる。作者本人が言ったことだからと言ってあまり信用しないほうがいいのだろう。
さて、もし『分かれ道ノストラダムス』に「カオスからコスモスへ」という狙いがあるのだとすれば、未読の人に対して「結局、この小説はどういうジャンルに属するのか?」ということを明かすのは好ましくないだろう。これはSFだったのか、ミステリだったのか、それとも別のジャンル小説か、非ジャンル小説なのか……何も言わないことにしよう。
ただ、この小説が青春小説の要素を多く含んでいるということは、言ってしまっても差し支えないだろう。この小説の主人公は間もなく16歳の誕生日を迎える少女であり、彼女が中学生の頃に思いを寄せていた少年の三回忌から物語が始まるのだから。
「青春小説としての『分かれ道ノストラダムス』」という切り口なら、この小説の属するジャンルに触れずに感想を述べることも出来るのではないか、と一瞬思ったのだが、よく考えてみればそれは「青春小説としての『時をかける少女』」や「青春小説としての『タイム・リープ』」について語るのと同じくらい難しいことに気づいた。
よってこの感想文はやっぱりこれにて終了!

読み初め

今年の読書は『真実の10メートル手前』から始める予定だったのだが、ついふらふらとマンガに流れてしまった。後悔はしていない。
年末に知人に勧められて買った本で、作者についても作品についても全く予備知識なしに読み始めた。
SF、ファンタジー系のショートコミック集だが、それぞれ「Part A」と「Part B」がセットになっているという独特の構成になっている。一話限りではなくすべてがそうなっている作品集というのは初めて読んだ。マンガだけではなく小説でも読んだ記憶はない。
この種のアイディアストーリーの非シリーズ作品集は一作一作の考案が大変で、だんだんアイディアが枯渇して面白くなくなることが多い。あるいは、読者が作風に慣れて新味を感じなくなる結果、面白くなくなるのかもしれないが、いずれにせよ高水準を保ったまま続けていくのは至難のわざだ。この本は1巻だから続巻もあるのだろうが、どこまで粘れるものか注視したい。
あと、もう一つ附記しておく。非シリーズの「奇妙な話」の作品集では、変化をつけるために後味の悪いもの、ダークな読み味のものを織り交ぜるのがふつうだが、この本は比較的からっとした明るいエピソードが多く、しかも一本調子ではないことが気に入った。厭な話も悪くはないが、新年早々読むにはこういう本のほうがいい。
今年は幸先のいい読書生活のスタートとなった。まずはめでたいことだ。

だんだん読めなくなる

新しい年の始めに今年の目標を立てようと思う。
その前に去年の目標がなんだったか振り返ってみよう。なにぶん1年前に立てた目標だから、当時の記録を読み返さないと覚えていないのだ。いやいや、それではいけないのだけれど……。
去年の目標は次のとおり。

  1. 小説を50冊程度読む。
  2. これまでに読んだことのない小説家の本を10冊以上読む。

このうち、2番目の目標は早くも3月には達成していたのだが、その後、急激に読書環境が悪化し、全然本が読めなくなった。たとえば、12月には小説2冊とマンガ1冊、合計3冊しか読んでいない。
そういった状況なので、さすがに小説50冊は無理だっただろうと思ったのだが、さっき集計してみると年間で小説を56冊読んでいることがわかった。対してマンガは26冊で、その他の本をあわせた合計は93冊。一昨年は126冊読んだので大幅減だが、それでも年始の目標は達成していることになる。
ちなみに四半期別にみると、39冊、18冊、26冊、10冊となっている。10月から12月にかけて10冊しか読んでいないのはいったい何があったのか? 昔のことはよく覚えていないのだが、確か9月のシルバーウィークのあたりに体調を崩して5日間寝て過ごしたのを皮切りに10月、11月も体調がすぐれず、本を読む気がわかなかったことは覚えている。毎年楽しみにしているハロウィンパーティーにも行けなかったしなぁ。いや、でも12月にはすっかり復調していたはず。なのに、なぜ本が読めなかったのだろう?
……と、ここまで考えて、11月中旬から12月上旬にかけて本が読めない事情があったことを思い出した。その頃に携わっていた仕事の関係で読書時間が極端に削られていたうえに、文章を目にするとゲシュタルト崩壊が生じるほどだったのだ。
そうこうするうちに年末を迎え、12月中旬以降は何もかもが忙しくなって、本が読めなくなっていた。毎月買っては積んでいた「小説推理」掲載の『分かれ道ノストラダムス』(深緑野分)をようやく連載第6回まで読み通したのは大晦日、すなわち昨日のことだ。なお、これはまだ完結していないし、1冊の本にまとまっていないので上記の冊数には含めていません。
閑話休題
今年の目標をどうするか?
あまり深く考えても仕方がない。こうしよう。

  1. 連城三紀彦の小説を5冊以上読む。
  2. 海外ミステリを20冊以上読む。
  3. 小説でもマンガでもない本を10冊以上読む。

この3つにしよう。互いに排他的な目標なので、最低35冊読む必要がある。
連城三紀彦は読んどかなきゃいけないよなぁ、と思って再刊・文庫化の折に買って積んである本が確か5冊くらいあったはずなので、目標を5冊にした。海外ミステリは昨年13冊読んでいるから再読も含めていいなら20冊という目標はさほど無理はないだろう。小説でもマンガでもない本というのは主に教養系新書になると思うが、こういった本も読んでおきたい。
というわけで、今年はこれらの目標に向かって邁進します。まず第1歩は昨年読めなかった『真実の10メートル手前』から! ……あ、目標と関係ないや。