ゴーストタウン化する日本

ちょっと大胆な見出しをつけたが、なかみはそれほど大したことがないので安心していただきたい。
昨日書いた「撤退の農村計画」と「むらおさめ」のコメント欄*1で匿名の人からこんな記事を教えてもらった。

コメント欄へのレスでも書いたが、個人的には「限界集落」という言葉を都市の問題に拡張して使用することには懐疑的*2なのだが、言葉が一人歩きする*3のは仕方がない。
都市人口の高齢化問題については、確か以前に論じたことがあったはずだと思い、日記の過去ログを探ってみると団塊の世代の平均年齢は毎年1歳ずつ上昇するという記事*4が見つかった。んー、でも例によって大したことは言っていない。一から考えることにしよう。
さて、上でリンクした記事で紹介されている「戸山団地」というのは一体どういうところか? 東京都都市整備局都営住宅団地一覧をみると、

区市名 団地名 主な所在地 面積 間取 建設年度 管理戸数 一般 シルバー 車椅子 主な線 主な駅
新宿区 戸山ハイツアパート 戸山 2-7 34 - 45 1LDK - 3DK 1968 - 1976 3019 3001 18 都営大江戸線 若松河田駅

と書かれていた*5。たぶんこの戸山ハイツアパートの通称が「戸山団地」なのだろう。
参考のため、Yahoo!地図にリンク*6しておく。
上で「主な駅」として挙げられている若松河田*7都営大江戸線新宿西口から2つめの駅だが、「新宿」という言葉からイメージするのとはかなり違った雰囲気のところだ。以前勤めていた会社の用事で、東横イン 新宿歌舞伎町に1週間連泊して、毎日そっち方面に歩いて往復したことがあるのだが、東新宿を過ぎたあたりから急に賑わいが失せて、閑静な住宅地という感じの街並みになるので驚いたものだ。副都心線が開通したので、東新宿界隈は状況が変わったかもしれないが、たぶん若松河田にまでは及んでいないだろう。
ただ、若松河田駅から北のほうは、仕事の合間に統計資料館に遊びに行ったことがある程度で、戸山まで足を伸ばしたことはないので、戸山団地付近がどういう雰囲気の場所なのかはわからない。そこで、戸山団地を紹介しているウェブサイトを探してみた。

んん、何となく雰囲気がつかめたようなつかめないような……。
まあ、ネット上の情報だけで行ったこともない土地の状況を十分に把握することなどどだい不可能なのだから、土地柄にはあまり拘らないことにしたい。
さて、この問題をどう考えるか?
老朽化した建物は建て替えたようだが、老朽化したコミュニティの立て直しは出来ていないようだ。山村の高齢化の場合だと人口が少ないから集落を捨てて集団移住という手も考えられるが、都心部の住宅を放棄して撤退するというのは全く現実的ではない*8
何もせずに放っておくのがいちばんだ、と考える人もいるだろう。何と言っても東京のど真ん中*9だから、長い目でみれば市場が何とかしてくれる、という考え方だ。市場は絶対ではないから、何ともならない可能性もあるのだが、市場が見捨てたものは救うに値しないのだから、いずれにせよ全く問題はないのだ……とまで言い切る人がどれくらいいるのかは定かではないが。
また、別の人は積極的な支援が必要だと考えるだろう。だが、誰がどうやって支援するのか、ということについては明確な指針もノウハウもない。上では都市部の問題を中山間地域の「限界集落」になぞらえることに疑念を表明したけれど、具体的な処方箋が見あたらないという点においては、両者に類似が認められることを否定するつもりはない。
さてさて、一体どうしものやら。ま、ここで頭を悩ませなくても、きっと誰かがいい智慧を出してくれるでしょう。
最後に、本文の内容とはあまり関係ないが、今日読んだ「限界集落」関係の記事2件にリンクしておく。

*1:この日記は日付単位でコメントをつけるようになっているから、この表現は厳密にいえば間違いだが、昨日はこれしか書いていないので、誰も文句は言わないだろうと思う。

*2:というか、「限界集落」という言葉を無造作に使用することそのものに懐疑的なので、たいていの場合括弧つきで使うことにしている。たまに忘れることもあるが。

*3:ちなみに、「都市型限界集落」という言い回しはサンデープロジェクト2007年12月9日放送をきっかけに広まったようだ。そのほか、同年12月13日付で(14)都会の「限界集落」、ゴーストマンション:NBonline(日経ビジネス オンライン)という記事もアップされている。ちなみに「限界集落」という言葉自体はここで書いたとおり、少なくとも1990年まで遡ることができる。限界集落 - Wikipediaの「1991年(平成3年)に最初に提唱した概念」というのは間違いです。現行の用法と直接は関係がなさそうな「高距限界集落」についてはここを参照されたい。

*4:ちなみに、この見出しはシルヴァーバーグの法則の捩り。そういえば、高度に発展した都市に住む人は郊外と山村の区別がつかないの見出しはクラークの三法則の三番目を捩ったものだ。それなら今回はスタージョンの法則を捩って……と考えてみたのだが、うまいフレーズが思い浮かばなかったのでやめた。しかし、なんでSF作家の名前のついた法則がこんなにあるかね? ミステリ作家の法則なんかあったっけ?

*5:上の表は、PDF形式の一覧表から該当箇所の文字データを抜き出して、再構成したもの。

*6:戸山団地は戸山公園を挟んで2箇所に位置しているようなので、間の公園に焦点を合わせた。

*7:ただし、地図でみた感じだと、現在では西早稲田東新宿のほうが近いようだ。

*8:などと書くと「山村の集落を放棄して撤退するのは現実的な策なのか?」と問われるかもしれない。「撤退の農村計画」と「むらおさめ」でも書いたが、その点については保留としたい。

*9:「ど真ん中」というのはもともと大阪弁で、東京弁だと「真ん真中」だが、今では前者のほうが優勢だ。別に大阪の肩を持つつもりはないが、何もかも東京に吸収されるばかりではないというのは気分がいい。