2009-01-30 殺人と死刑 雑文 1 殺人事件には加害者と被害者がいる。 殺人事件の加害者は事件の後も生きていることが多いが、殺人事件の被害者は事件の後には生きていない。 生きている人には生存権があるが、生きていない人には生存権はない。 殺人事件の加害者が事件の後も生きていれば生存権があるが、殺人事件の被害者には事件の後には生存権はない。 殺人事件の加害者の生存権を死刑によって奪うことは可能だが、殺人事件の被害者の生存権を死刑によって回復することはできない。 2 殺人事件の被害者には遺族がある場合と遺族がない場合がある。 殺人事件の被害者に遺族がある場合に、犯人を殺してやりたいほど憎む遺族がいる場合と犯人を殺してやりたいほどまで憎む遺族がいない場合がある。 殺人事件の被害者の遺族が犯人を殺してやりたいと思う場合に、死刑によってその感情が解消される場合と死刑によってはその感情が解消されない場合がある。 いずれの場合においても、殺人事件の被害者本人が、この世の生者として、犯人を殺してやりたいと憎むことはない。 3 多くの人にとって、自分の家族や愛する人が殺人事件の被害者になったときの憤怒を想像することは容易だが、自分の家族や愛する人が殺人事件の加害者になったときの悲嘆を想像するのは困難であり、自分自身が殺人事件の加害者になったときの感情が憤怒なのか悲嘆なのか、それとも別のものなのか、全く見当がつかない。 自分が殺人事件の被害者になっても死刑に反対する、と本心から言える人は少ないが、自分が殺人事件の加害者になっても死刑に賛成する、と本心から言える人もまた少ない。