- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/08/17
- メディア: 雑誌
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- 作者: 石川喬司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1981/10
- メディア: 文庫
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「怖ろしい中世のロマンス」!
いったい、これはどういう作品なのだろうか? 「女か虎か」や「謎のカード」と並び称されるからには、きっと面白い小説に違いないのだが。だが、未訳ではどうしようもない。原語で読むだけの語学力はないし、仮にあったとしてもテキストが入手できない。幻のリドル・ストーリーをいつかは読みたいと思いつつ、悠久の年月が流れた。
そしてそのうち、世界三大リドル・ストーリーのことはすっかり忘れてしまっていた。2005年にちょっとした機会に一瞬だけ思い出したけれど。
世界三大リドル・ストーリーのことを再度思い出したのは2007年のこと。
- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/12
- メディア: 文庫
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だが、この名アンソロジーにも「恐ろしい中世のロマンス」*3は収録されていなかった。またしてもタイトルのみの言及とは!
さらに2年を経た2009年のこと。
「小説すばる」誌上で、『追想五断章』のモチーフの一つであるリドルストーリーについていろいろお話ししてきました。インタビュアーは書評ライターの小池啓介さんです。
タイトルには「怖ろしい」も「恐ろしい」もついていないが、「マーク・トウェインのリドルストーリー」というのだから、この「中世のロマンス」こそが世界三大リドル・ストーリーのひとつであることは間違いない。これは是非とも読まなければ。
というわけで、早速書店に行き、「小説すばる」の今出ている号を買ってきた。前説にあたる米澤穂信インタビューを読み、そして、いよいよ「中世のロマンス」へ……あ、あれ?
未訳の「幻のリドル・ストーリー」じゃなかったのか!
- 作者: マーク・トウェイン,Mark Twain,勝浦吉雄
- 出版社/メーカー: 文化書房博文社
- 発売日: 1993/12
- メディア: 単行本
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と、いったんは納得したのだが、まだ続きがある。
もう1作、ぜひとも書誌情報を伝えておきたい作品がある。それは、マーク・トウェイン「中世のロマンス」だ。
この存在を初めて知ったのは、石川喬司『SF・ミステリおもろ大百科』早川書房(77)だった。同書には、以下のように書かれている。
『女か虎か』とともに世界三大リドル・ストーリーの古典とされているのはマーク・トウェインの『怖ろしい中世のロマンス』(1871)と、クリーヴランド・モフェットの『謎のカード』(1890)である。
「女か虎か」に感銘を受けた私としては、どちらも読んでみたくて仕方がなかった。だが、「謎のカード」に関しては巻末の「SF・ミステリ読書ガイド」に邦訳情報が掲載されていたものの、「怖ろしい中世のロマンス」は「未訳」という悲しい記述……。文庫化された『夢探偵 SF&ミステリー百科』講談社文庫(81)でも同様だ。
長い間、「怖ろしい中世のロマンス」は翻訳されていないものだと信じこんでいたのだが、ショートショートの研究を始めて数年後、何気なく古本屋で買った『マーク・トウェーン短篇全集 第二巻』鏡浦書房(59)を読んでいたら、同全集第1巻に「中世伝説 一篇」なる作品が収録されていると書かれているではないか。
これだ! 私は直感し、図書館に向かった。読んでみると、間違いない。確かにこれこそ「怖ろしい中世のロマンス」なのである。この全集はのちに出版協同社から新装版(76)が発行されていると知り、『マーク・トウェイン短編全集(上)』文化書房博文社(93)にも「中世のロマンス」というタイトルで収録されていると判明した。
さらに、『ショートショートの世界』刊行後だが、『マーク・トウェインのバーレスク風自叙伝』旺文社文庫(87)にも「恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス」として収録されていることもわかった。『マーク・トウェインのバーレスク風自叙伝』は前から持っていたのだが、きちんとチェックしていなかったのだ。『ショートショートの世界』の読者には申しわけない限りである。
やっぱり、『夢探偵』より前に邦訳があったんじゃないか!
ところで「ショートショートの世界』の読者には申しわけない限りである」というのはどういうことだろう? 本棚から同書を引っぱり出してきた。
- 作者: 高井信
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/09/16
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「女か虎か」について詳細に述べてきましたが、「女か虎か」がリドル・ストーリーの嚆矢というわけではありません。たとえば、「女か虎か」の十二年前、一八七〇年に発表されたマーク・トウェイン「中世のロマンス」は、まさに傑作リドル・ストーリーです。『マーク・トウェーイン短篇全集 第一巻』(鏡浦書房60、出版協同社76)、『マーク・トウェイン短編全集(上)』(文化書房博文社93)に収録されていますので、ぜひ読んでみてください(前者の邦訳タイトルは「中世伝説一篇」)。
うおおお、「中世のロマンス」に邦訳があることがちゃんと書かれているではないですかっ!
『ショートショートの世界』は読んであるのに*4この記述をすっかり見落としていた。
さて、「小説すばる」に再録された「中世のロマンス」の末尾には次のような註釈がある。これを読めば、なぜこの邦題が、怖ろしくない「中世のロマンス」なのかがわかる。
原題は「A Medieval Romance」とする説と、「Awful Terrible Medieval Romance」とする説がある。旺文社文庫『バーレスク風自叙伝』によると、本作は1871年に「バッファロー・エクスプレス」紙に発表され、1871年に諷刺画を交えた構成で単行本化された。「EQMM」でエラリー・クイーンが代表的なリドル・ストーリーとして挙げていて、そのことを『謎のギャラリー』で、北村薫氏が紹介している。氏は本作を《二つの結末の用意された話》と評している。 (編集部)
『謎のギャラリー』か。確か文庫版で持っていたはずだが……。
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/01
- メディア: 文庫
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- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/01
- メディア: 文庫
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- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02
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- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02
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さて、非常に前置きが長くなってしまったが、「中世のロマンス」の感想を書いておこう。
傑作だ。