
- 作者: 井上明義
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/02
- メディア: 単行本
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今日読んだのは、2005年に出版された『土地の値段はこう決まる』という本だ。そこには、次のように書かれている*2。
私は、今後五年ほど地価の値下がりは続くと思っている。そして値下がりのペースが現状のままなら、五年後、地価は平成一六年の価格の五割になってもおかしくないと思う。
著者紹介文によれば「土地バブル最盛期に、地価暴落を予言したことでも知られる」人物だそうだ。平成16年、すなわち2004年といえば、バブル崩壊後下落を続けていた地価がそろそろ落ち着いて、東京ではミニバブルが起こりかけていた頃だが、著書はそのような地価上昇は、一極集中型投資がもたらす構造変化によるものであり、需給バランス改善による値上がりではないため一過性のものになりかねない、と懸念を表明している。
さて、それから5年以上の年月が流れた。結果はどうだったか。著者が言及している都道府県地価調査で見てみよう。
この表でみると、2005年は△、すなわちマイナスだらけだが、2006年から2008年までは三大都市圏では地価上昇、地方圏では地価下落とはっきり明暗がわかれている。そして、2009年と2010年は地方圏だけでなく三大都市圏でも地価が下落している。2008年9月のリーマン・ショックの影響かもしれない。
ただ、この表では2004年と2009年を比較して地価が上がっているのか下がっているのか、とっさに判断することはできない。そこで、変動率を指数化したグラフを見てみよう。
上のグラフをざっと見ると、住宅地・商業地ともに2004年より2009年のほうが下がっていることは下がっているが、さすがに半値というほどではない。また、下の東京圏のグラフでは住宅地はわずかに下がり、商業地は逆に少し上がっているように見える。
というわけで、『土地の値段はこう決まる』の予測は外れていることになる。もっとも、上の引用文中をよく読めば、
- 今後五年ほど地価の値下がりは続く
- 値下がりのペースが現状のままなら、五年後、地価は平成一六年の価格の五割になってもおかしくない
と書かれており、1については全国の全用途については当たっているし、後者についても前件が偽であるので、文全体は真ではある。
以上、『土地の値段はこう決まる』のもっとも煽りっぽい箇所を取り上げて検討してみたが、この本の真価は別のところにある。たとえばバブル経済の構造について説明した第3章、不動産鑑定士と不動産鑑定業界の内情について書かれた第4章・第7章など、読み物としても面白く、また啓発的でもある。地価公示が国土利用計画法に基づいているというような単純な誤り*3もあるけれど、本全体としては読んで損のない良書だと思う。
冒頭で、現代社会を扱った本はすぐに古びる、と書いたが、この本は今読んでも十分益するところがあるだろう。
最後に、『土地の値段はこう決まる』を通して、もっとも感心した箇所*4を紹介しよう。
経済界には、人口減に伴ってGDP総額が減少することに懸念を抱く方々もおられる。しかし、GDPの総額が減っても、一人当たりGDPが増えるのであれば、自然環境や住環境が豊かになるという側面も考えるべきではないだろうか。私は実は、地球規模での人口減少には賛成なのである。
【略】
ヨーロッパには人口減少に危機感を持ち、国家補助で人口増加を目指している国もある一方、中国は法律で一人っ子政策を推進している。わが国では人口は自然に減少しており、私に言わせれば地球の中の優等生だ。世界の人口増加に懸念を示しながら、日本の人口減には異を唱える「総論賛成各論反対」のような識者は信用することができない。
世界の人口が二〇〇年前くらいの水準にまで減少すれば、食糧不足や地球温暖化は解消し、消費電力も減少すれば無理な発電設備も不要になり、悪化している地球環境も改善されよう。
細かくみればさまざまな批判や反論が可能だが、大筋では支持したい。「無理な発電設備」の被害を見せつけられた今だからこそ、このような意見にはきちんと耳を傾けるべきではないだろうか。