日本ではなぜ女性が三蔵法師を演じるのか?


このCMをみて改めて思い出したのだが、日本では「西遊記」の三蔵法師役は女性が演じるのが通例になっている。夏目雅子が演じた三蔵法師が当たり役だったから、というのがもっとも大きな理由だろう。記憶を辿ってみると、アニメ「悟空の大冒険」の三蔵法師の声は野沢那智があてていたし、人形劇「飛べ!孫悟空」はいかりや長介だった。ああ、三人とも故人ではないか! 昭和は遠くなりにけり。
調べてみると、三蔵法師役を女性が演じた例は夏目雅子以前にもあったようだ。

ちなみに「日本で三蔵法師を女性が演じるようになったのはドラマで夏目雅子三蔵法師を演じてから」と語られることがある。しかしこれは厳密には正しくなく、1953年のドラマ「少年西遊記」でも既に三蔵法師は笠間桐子という女性の子役が演じている。「女性が演じることが定着したのは夏目雅子の影響も大きい」といった程度の表現が正確なようだ。

夏目雅子以後ではテレビの連続ドラマに限れば、宮沢りえ牧瀬里穂深津絵里の3人が三蔵法師を演じているが、全員女性だ。テレビドラマ以外では男性が演じた例もあるだろうが、とっさに思い出せない。しいていえば「ドラえもん のび太のパラレル西遊記」では三蔵法師役は池田勝だが、三蔵法師に扮するしずかちゃん役は野村道子なので、やはり三蔵法師役を女性が演じた一連の作品群に属することになるだろう。
のび太のパラレル西遊記」は別として、三蔵法師役を演じているのは女性でも、作中では男性ということになっている……はずだったのだが、いろいろ調べてみると、「無双OROCHI Z」というゲームでは三蔵法師が女性だということになっているらしい。「法師」という呼称は男性限定かと思っていたのだが……。さらに、「西遊記」の三蔵法師がもともと女性だとか、そのモデルとなった玄奘も女性だったとか、そんな思い違いをしている人もいるとのことだが、本当かなぁ?
閑話休題。「日本ではなぜ女性が三蔵法師を演じるのか?」という問題については既にさまざまな人が論じているが、その中で特に興味深かったのが★三蔵法師役はなぜ女性!?:佐倉智美のジェンダーあるある研究ノート:So-netブログだ。三蔵法師がもつ「“守られる”にふさわしい<か弱げ>な雰囲気」によるのだという。なるほどなぁ。
ところで、「西遊記」と似た人物配置になっている物語として、日本人なら「桃太郎」と「水戸黄門」を思い浮かべるだろう。水戸光圀を女性が演じるというのはちょっとイメージしがたいが、桃太郎なら探せばありそうだ。
そういえば、「西遊記」のような主従関係はないものの、特撮もののスーパー戦隊シリーズも初期は女性が一人だった。とくに<か弱げ>な雰囲気はないと思うが、「男性集団の<紅一点>」という配役に、何らかのジェンダー観が働いていたのかもしれない。
このあたりを突き詰めて考えてみると面白そうだが、時間がないので投げっぱなし。