高度に発達した「最近のラノベ」は、サラリーマン小説と区別がつかない

数年前からライトノベルをほとんど読まなくなっているので、最近のラノベの傾向がよくわからない。このあたりを読むとますます傾向がわからなくなってくる。
なので、今日読んだ『星降る夜は社畜を殴れ』が最近のラノベの中でどのように位置づけられるのかなどといったことはさっぱり見当がつかない。オビをみると、「『涼宮ハルヒ』シリーズの谷川流衝撃!!」とか書いてあるのだが、今でも谷川流の名前は有効なのだろうか? それとも、他にオビのコメントにふさわしい人材がいないほどスニーカー文庫の作家層は薄いのだろうか? そのあたりもよくわからない。
この本を手に取ったのは、『星降る夜は社畜を殴れ』:"社畜ライトノベル"の誕生 - 脱社畜ブログをたまたま見かけたからだ。このサイトでライトノベルを取り上げるのは珍しいので気になったのだ。
実際に読んでみると、設定の突飛さはともかく、案外まともなラノベだという印象を受けた。「まとも」というのは「まじめ」という意味ではない。登場人物のキャラクターや物語の展開が、かつて読んだ数々のラノベから大きく離れてはいないというふうに感じたのだ。とはいえ、上述のとおりの事情で、最近のラノベの主流からみてまともかどうかの判断はつかない。
作中には現代日本の労働問題がネタとして取り込まれている。基本的にコメディ調なので、過労死や過労自殺などの重い話題は取り上げにくいのではないかと思ったが、小説全体の雰囲気を乱すこともなく、かといって問題を矮小化したり不謹慎な取り扱いをしたりすることもなく、うまく処理しているように思った。
この小説は第19回スニーカー大賞特別賞受賞作を改稿したものだそうで、てっきり1冊で完結しているものだと思って読んだのだが、最後のシーンで謎の人物が登場して次巻へのヒキとなっている。設定の突飛さで意表を衝く小説は、読者が設定になじんでしまうとインパクトが弱まるものだが、2巻ではどう対処するのだろうか? それがちょっと気になった。
この小説を読んで、ふと『こちら郵政省特配課』を連想した。前世紀に出た小説で、内容はほとんど覚えていないが、読んでいる最中は非常に面白かったという記憶がある。でも、続篇の『追伸・こちら特別配達課』は読んでいない。『星降る夜は社畜を殴れ』の2巻が出たら、さて、どうしようか。