アネクドート

知人からもらったメールに書いてあった話。


 ソヴィエト末期、有力者だったゴルバチョフはこう発言しました。
「いま、われわれソヴィエトは崖っぷちに立っている」
 そして書記長に就任した彼はこう言いました。
「いま、われわれソヴィエトは大きく一歩を踏み出した」
実話かどうか裏はとっていないが、いかにもありそうな話ではある。
もし作り話だとすれば、作者は非常にセンスのいい人だろう。あるいは、比類のない神々しいような瞬間が訪れたのかもしれないが。
それはともかく。
「まえ」とは「目方」すなわち、人間の身体を基準として、目のついている方向だということに過ぎない。前の反対は後ろだが、これを昔は「しりえ」と言った。すなわち「尻方」だ。こちらも同様で、尻のある方向ということだ。
にもかかわらず、人は「前向き」や「前進」を何か価値のある、よいもののように捉えることが多く「後ろ向き」や「後退」は何か劣ったこと、悪いことのように考えてしまう。向きと価値が一体となっているのだ。
冒頭のエピソードは、そのようなドグマを衝くものであり、あまりにも単純な同一視への警告を与えてくれる。