男が男性で、男性が男で

大阪市淀川区新北野1丁目のマンション一室で12日午前5時50分頃、住人のアルバイト・加我健太さん(24)が脇腹などを刺され、約1時間後に搬送先の病院で死亡した。大阪府警淀川署は殺人未遂の疑いで、同居男性の自称アルバイト・加藤泰紀容疑者(24)を現行犯逮捕した。

淀川署によると、加藤容疑者は加我さんの「交際相手」。2人は半年前から付き合い始め、同時期にマンションで一緒に住むようになったが、以前から別れ話をめぐり、けんかが絶えなかったという。事件当日について、加藤容疑者は「(加我さんが)部屋に帰ってきたら刺してやろうと思っていた」と話しており、犯行前から殺意を抱いていたとみられる。

「交際相手」になんで括弧をつけますか……? 「それは世にもあさましい、人倫にももとることなのだ」などと言っていた時代はもう過ぎたかと思っていたのだが、ストレートな物言いをしないだけで、あまり変わっていないように思う。
それはともかく、見出しの「男が交際中の男性刺し殺す」も気になる。以前も似たようなことを書いたことがあるが、マスメディア独特の「男」と「男性」の使い分けには違和感をおぼえる*1。どちらかに統一すればいいのに。

*1:もちろん「女」と「女性」の使い分けにも同様の違和感がある。

残業したら残業代を!

共産党は、極端に離職率が高いなど苦情や相談が多く、若者の使い捨てが疑われる企業への対策を盛り込んだ「ブラック企業規制法案」を取りまとめました。

それによりますと、企業側に労働環境の改善を促すため、▽年間の残業時間の上限を360時間とし、▽サービス残業が明らかになった場合、規定の2倍の残業代を従業員に支払うことを義務づけるほか、▽終業から始業まで連続11時間以上の休息時間を保障するとしています。

この種の報道は、法案そのものの趣旨からかなり外れていることがよくあるので、あまり真に受けてはいけないのだが、その留保つきでひとつ感想をば。
残業したら残業代を支払うのは当然で、残業代を支払わない違法企業*1には何らかのペナルティが必要だ。残業代をケチるような企業には、より大きな金銭的支出を強いるのがペナルティとして有効であるのは言うまでもない。
ただ、従業員に2倍の残業代を払うというのはどうだろう? 残業代は労働に対する対価であって、企業へのペナルティの結果として従業員が利益を得るというのは、なんだか筋違いのような気がする。サービス残業を暴露すれば利益になるということで、従業員の内部告発の誘因としようという意図があるのかもしれないが、どの程度機能するのだろうか? 案外、2倍払いした残業代を「回収」する仕組みができたりして。
サービス残業が明らかになったときには、残業代と同額を罰金として国に納めるように義務づけるほうが、取りっぱぐれが少ないのではないか。そのお金で労働基準監督官を増員すれば一石二鳥だ。従業員には未払いの残業代プラス延滞利息相当額で我慢してもらうとして。
思いつきで書いたので、何か大きな見落としがあるかもしれません。もしそうなら、ごめんなさい。予め謝っておきます。

追記(2013/10/22)

議案情報:参議院ホームページ労働基準法等の一部を改正する法律案の情報が掲載されていた。本文はPDFで縦書きのため、パソコンの画面では見にくい*2
上で引用した記事では「規定の2倍の残業代を従業員に支払うことを義務づける」と書かれているが、法律案にはそのような条項はない。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を一部改正して、現行の第14条のあとに第15条を加え、事業主に「時間外労働等管理規程」の作成を義務づけ、その規程の中に「時間外労働等に係る割増賃金が支払われない場合に労働者が当該割増賃金の額に加えて支払を請求することができる金額に関する事項」を記載することを義務づけるという案になっている。この規程を作成しなかった場合には20万円以下の罰金に処せられるが、作成した上で遵守しなくても罰則はないようだ。公権力でごりごりと押していくよりも事業主と労働者の協議に委ねるほうがいいということなのかもしれない。

*1:ブラック企業」という言い方はあまり好きではない。「ブラックユーモア」も同様。

*2:衆議院-議案では法律案本文はHTMLで掲載されているのだが、この法律案はまだ掲載されていない。