殺人も起こらず、宇宙人も登場せず

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)

まだコバルト文庫コバルトシリーズだった頃。作者は吉田としだったはず。読み始めたときには「殺人も起こらないし、宇宙人も登場しない小説なんて面白いはずがない!」と思っていた。読み終えたとき、この世には殺人も起こらず宇宙人も登場しないけれど、面白い小説があると知った。今はもう、ストーリーどころかタイトルすら覚えていないけれど。
それから長い年月が過ぎ、忘れていた事を思い出す。そう、この世には殺人も起こらず宇宙人も登場しないけれど、面白い小説が確かにある。
推定少女』と『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を経て、桜庭一樹ライトノベルからジュニア小説へ、そして少女小説へと遡る。
「新しい」という形容詞は無条件に褒め言葉で、「古い」というのは無価値だと、そう思っている人には強いては薦めない。でも、「懐かしい」という言葉にほんの少しでも心惹かれる人なら、はじめて読むのに懐かしい『荒野の恋』がきっと気に入るはず。