いのちのなかばに

カエルメモ - 最後に読みたい本
「人生最後に読みたい本」とは少し違うが、ちょっと思い出したのは、先の大戦に召集されたある兵士が、戦場に持って行くただ一冊の本として『黒死館殺人事件』を選んだという有名なエピソードだ。確かこの兵士は無事復員して、戦後の日本探偵小説界で活躍したはずだが……誰のことだったか覚えていない。渡辺剣次だったろうか? いや、松村喜雄だったかもしれない。
まあ、それはそれとして。
あと数日のうちに確実に死が訪れることがわかっていて、かつ、冷静な思考力が残っているという状況なら、ぜひとも読みたい本がある。
それはこの本だ。これを「本として読む」のは作者の意に反することかもしれない。だが、その価値はある。*1
今はまだ夢と希望と未練と執着にまみれているので、この本を手にとるには早すぎる。しかし、最期の時をともに過ごすには最高の伴侶だろうと思う。

*1:実際、作者の死後150年以上の長きにわたって、これは専ら読まれるべきものとして受容された。