巡る因果は糸車

パソコンの前で砂糖たっぷりのコーヒーを飲んでいて、それをキーボードにぶちまけてしまったとしよう。「あっ」と叫んだが覆水盆に戻らず、パソコンは壊れてしまったとしよう。
この一連の出来事について次の3つの記述があてはまるかどうかを考えてみよう。

  1. パソコンにコーヒーをこぼしたので、「あっ」と叫んだ。
  2. パソコンにコーヒーをこぼしたので、パソコンが壊れた。
  3. 「あっ」と叫んだので、パソコンが壊れた。

直観的には、1と2は正しいが3は間違っているように思われる。この直観を疑うことも可能だが、そのまま受け入れるとすれば、「真であるふたつの文を並べて、『ので』で繋いだ場合、複合文全体は真であったり、偽であったりする」ということが見てとれるだろう。
言い換えれば、「ので」で繋いだ複合文の真偽は要素文の真偽から一意には定まらないということでもある。
これは、形式論理学で因果関係を扱うことの難しさを示している。