呉といえば呉一郎と呉清源と呉智英
- 作者: 戸高一成
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/04/09
- メディア: 新書
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軍事にも模型にも興味はないのだが、下記の事情により読んでみることにした。
- 今週末に一畑電気鉄道の貸切電車に乗りに行くことにした。
- ついでだから奥出雲おろち号にも乗ることにした。
- 時刻表と相談のうえ、「青春18きっぷ」を使って、広島あたりで一泊することにした。
- そういえば、まだ呉線に乗ったことがなかったことに気づき、ルートに含めた。
- ついでだから、呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)に行ってみようと思い立った。
- 知人にその話をしたら、この本を薦められた。
こういった事情なので、あまり期待はしていなかったのだが、読んでみるとなかなか面白かった。すぐ読める本なので詳しい内容を紹介する気はないが、「ものづくり」や工業技術に興味のある人は読んで損はないと思う。軍事・戦史のファンがどう思うかはわからないけれど。*1
個人的に印象に残った箇所を抜き書きしておく。まず、167ページから。
もう一箇所、今度は170ページから。
「科学技術」と一口にいわれることが多いが、科学と技術は違う。科学は理論上の世界なので、結果としての答えはただ一つ。答えがいくつも出れば、どれかが間違っていることになる。徹底した客観の世界なのである。
しかし、技術の世界は違う。技術は人間の腕前を通して現れるものだ。同じ図面、同じ素材、同じ工具を使っても、作る人間の腕前が違えば、違ったものができあがる。「許容誤差」という言葉があること自体、まったく同じ製品は二度と作れないことを示している。人間の「腕前」は、この誤差を極限まで減らす。
ところで、この本では言及されていないが、大和について語るにはもう一つの視点があるように思われる。それは、「昭和の三大バカ査定」筆頭としての大和である。大和が東シナ海に沈んだ後、津軽海峡にトンネルが掘られ、伊勢湾は干拓された。その後も中バカ、小バカがうようよと沸きだして、今や日本は世界有数の借金国となっている。そう考えると大和を通して見えてくる世界は途切れることなく現在に続いている。
大和の背後には、明治から昭和にかけての日本の歴史や近代産業技術が凝縮している。その他にも、計り知れないほど大きなものがあるのではないか。そう考えるとき、大和の存在は単に世界最大の戦艦という枠を離れ、日本の産業技術史上のシンボルとして後世に伝えられていくだろう。大和を通して見えてくる世界は大きい。