肉じゃがの味

それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス)

英国に留学中にビーフシチューを愛食した東郷平八郎が帰国後に海軍の司令官となり、部下のコックにビーフシチューを作らせようとした。コックは生まれてこの方一度も食べたことのない「びいふしちゅー」なるものを上司のうろ覚えのレシピをもとに再現しようとした。その結果、肉じゃがが誕生したのだという。本当かどうかは定かではないが、よく知られた肉じゃが誕生秘話である。
さて、『それでも町は廻っている』はメイド喫茶を舞台にしたマンガだ。主人公はそのメイド喫茶でウェイトレスをしている女子高生だ。だがしかし……。
巻末のあとがきに曰く

薄々お気付きの方も多いと思いますが、僕は本物のメイド喫茶に行ったことがありません。そればかりかメイドに対して特別な思い入れもありません。
だが、それがいい
下町の高校生と商店街のおっちゃんたちが繰りひろげる、なんということもない日常コメディ。そこには、レトルトパックに入ったビーフシチューはないけれど、鍋でじっくり煮込んだ肉じゃがの旨みを心ゆくまで味わうことができるだろう。
表紙のメイド姿に臆することなく、多くの人々に読んで貰いたい佳作だ。