ひとまず完読

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

ここしばらく石持浅海の本ばかり読んでいたような気がする。いや、気がするだけではなくて、実際、他の本はほとんど読んでいない。その努力(?)の甲斐あって、既刊長篇はこれで全部読んだことになる。何とか間に合った。短篇はまだいつくか未読のものがあるが、雑誌のバックナンバーを探してまで読もうとは思わない。短篇集が出るのを待つことにする。
さて、この『BG、あるいは死せるカイニス』は石持浅海の作品としてはやや異色作の部類に入るだろう。ふつうに殺人事件が発生し、ふつうに警察が捜査を行い、ふつうに関係者が取り調べを受けている。これは、他の石持作品には見られない特徴だ。そのため、閉鎖空間でただただひたすら推理と討議を繰りひろげるという例のスタイルは影をひそめているので、ロジック好きの読者には少し物足りないかもしれない。
もう一つ大きな特徴は、一部の読者*1の反感または抵抗感を誘う、あの独特の歪んだ倫理観が前面に出ていないということだ。そのおかげでかなり後味のいい結末になっている。ただし、腐れ正義漢が自己中心的な価値観を振りかざして謎を深めるという構図ではないため、その分意外性は薄れてしまっている。
とはいえ事件の真相が全く予想の範囲内だったわけではない。というか、犯人も動機も全然当たらなかった。参考のために、昨日*2予想していた犯人と動機を書いておくことにしよう。
(以下、未読の人はご注意ください。)

犯人
宮下小百合
動機
男になるため

いや……当たってると思ったんだけどなぁ。

*1:もしかしたら大部分の読者かもしれない。

*2:120ページまで読んだ段階。