ABCD包囲網

先日であったA氏*1から聞いた話だと、昔からの知り合いで最近ご無沙汰しているB氏*2が少し前にちょっとしたトラブルを引き起こしたそうだ。B氏がC氏*3と喧嘩をして犬猿の仲になっているという。
これはちょっと困ったことになった。実はC氏とも知り合いなので、下手をすると板挟みになってしまう。
もう少し詳しいいきさつを知りたかったのだが、残念ながらA氏は直接B氏とC氏の喧嘩を目撃したわけでなく、あとでC氏から教えてもらっただけなので、あまりよくは知らないのだという。A氏は「詳しいことはD氏*4が知っているはずだよ」と教えてくれた。
D氏もまた、B氏とC氏の共通の知人であり、A氏よりもさらに親交が深いので、詳細を知っていてもおかしくはない。親密なだけに、内情についても口をつぐむ可能性があるが、B氏とC氏の間で板挟みにならないための立ち回り方なら教えてくれるかもしれない。そこで早速D氏に電話をしてみたところ、いきなりA氏に対する激しい非難を聞かされた。どうもA氏とD氏の間でも何か諍いがあったようだ。
D氏にきけばいいとアドバイスしてくれたのは当のA氏なのだから、A氏のほうはさして気にもとめていないようだが、D氏にとってはA氏とのごたごたをかなり深刻に捉えていたようだ。詳しい事情はわからないが、あまり深入りするのは避けたほうがいい。D氏からの情報入手は諦めることにした。
ここから話がさらにややこしくなる。
いったん電話を切ったあとで、別件でD氏に聞いておきたいことがあったのを思い出して、再度電話をかけようとして、先ほどの電話で番号を間違えていて実はD氏にではなくC氏に電話していたことに気づいた。C氏とD氏は声がよく似ているので、勘違いしたまま会話していたのだ。するとA氏と諍いを起こしていたのはC氏だったのか。
頭を抱えつつ、今度は本当にD氏に電話をかけたところ、さらに意外な事実が判明した。先日、A氏と会ったはずの時間帯に、A氏は実はD氏と一緒に別の場所にいたというのだ。「もしかしてA氏とB氏を見間違えたのでは?」とD氏は言った。
「まさか」と、その時は一笑に付したが、よくよく考えてみるとA氏とB氏は見かけがよく似ている。それに、自慢じゃないが、人の顔を覚えるのは苦手だ。B氏が冗談か何かのつもりでA氏の名前を騙ったなら、騙されてしまうこともあるだろう。しかし、B氏は何のためにそんなことをしたのだろう?
その疑問を抱えつつあれこれ思いを巡らせているうちに、変なことを思いついた。未だかつてA氏、B氏、C氏、D氏の4人に同時に会ったことが一度もないので、彼らが本当に「4人」なのかどうか自信が持てなくなってきたのだ。さすがに全員同一人物ということはないだろうが、誰かと誰かが同じ人だったとしても不思議はないのではないか。
頭の中が混乱して収拾がつかなくなったので、さっさと寝ることにした。
その夜の夢には「そば切りの味噌漬け」という変な食べ物が出てきた。悪夢だった。

*1:名前の頭文字がAだというわけではない。単なる記号です。念のため。

*2:名前の頭文字がBだというわけではない。単なる記号です。念のため。

*3:名前の頭文字がCだというわけではない。単なる記号です。念のため。

*4:名前の頭文字がDだというわけではない。単なる記号です。念のため。