騙し猫

こんな夢を見た。
誰かの家に遊びに行った。部屋中、猫だらけだった。猫屋敷だ!
庭に面した窓の下、カーテンの陰から顔を出している猫が「にゃー」と鳴いていて可愛らしかったので、そっと抱き寄せてみると、胴体が切れていて、後ろ足がなかった。断面はすっぱりと切れているのではなくて、少しささくれ立ったねじのような状態だ。
あたりを見回してみると、逆に後ろ足と尻尾だけの猫がいた。尻尾をぴょこぴょこと振っている。よかった、まだ生きているようだ。
前半身だけの猫と後半身だけの猫を手に取り、胴体の断面を見比べてみると、どうやらぴったり合いそうだ。早速断面で接いでみることにする。
やった! 一体の猫になった。
ほっとしたのもつかの間、また前半身と後半身がばらばらになった。
そこに、家の主が現れた。
「どうかした?」
「いや、この猫、うまく繋がらないんです」
半分半分になった猫を飼い主に手渡すと、彼はこともなげに言った。
「ああ、これは騙し猫だよ」
夢はこれでおしまい。
結局、どういう事情があったのかはわからずじまいだった。もともと二匹の別々の猫または猫もどきがいて、つなぎ合わせると一匹の猫になるかのような紛らわしい姿をしている、ということだったのだろうか? それとも、それはやはり一匹の猫で、前後分離で人を驚かせるという趣向だったのだろうか?