耽美!

薔薇密室

薔薇密室

6月1日から半月かけてようやく読み終えた。今日が貸し出し期限なので、これから図書館に返却に行くが、その前に少しだけ感想をば。
前にも書いたように、皆川博子の小説を読むのはこれが初めてで、経歴も作風もほとんど知らずに読んだので、先の展開がまるで読めなかった*1
着地点がだいたい見えているほうが安心して読めて疲れずにすむから望ましいと考える向きにはお薦めしないが、今までに読んだことがないものを、新鮮な読書経験を、そして文句なしに面白い小説を渇望する人には是非ともお薦めしたい。
ひとつ残念だったのは、この小説を読むためにまとまった十分な時間を確保しておかなかったことだ。どんな小説でも細切れに読むよりは一気に読んだほうがいいに決まっているが、特に『薔薇密室』のように技巧的で構築感溢れ、そして細やかな伏線に満ちた作品の場合には、一定の期間、日常の些事をすべて捨てて閉じこもって読むほうが絶対に面白い。なにぶん、550ページを越す大長篇だけに全篇一度に読むだけの時間を確保するのは社会人には難しいのだが、一泊二日の旅行に出る程度の余裕があるなら、その時間をこの本に割くことはできたはず。そう考えるとちょっともったいないことをしたという気になる。
『薔薇密室』には『死の泉』や『伯林蝋人形館』など、時代背景や一部の固有名詞が関連する作品があるようだ。できればそのあたりにも手を伸ばしてみたいと思っているが、次は今回の失敗を繰り返さないように、土日を完全に空けて万全の態勢で……などと気負いすぎるといつになっても読めない。人生何事にも妥協と諦めはつきものだ。さて、どうしたものか。

*1:ただし、皆川博子の他の作品を読んでいたら先の展開の見通しがつくというわけでもないようだ。『薔薇密室』読了後にあちこちの感想サイトをみたところ、どうも皆川博子はかなり幅広い傾向の作品を書く人らしい。