失われた20年

スレイヤーズ 1 (ファンタジア文庫)

スレイヤーズ 1 (ファンタジア文庫)

調べてみると、元版の『スレイヤーズ!』が出版されたのは1990年1月のことなので、まだ20年は経っていないことがわかった。これはちょっと意外だった。というのは、その昔、同級生たちがこぞって『スレイヤーズ』を読んでいる隣で一人ひっそりと当時始まったばかりの講談社ノベルスの「新本格推理」を読んでいたような記憶があったからだ。
だが、書誌的事実は動かせない。よく考えてみると、当時の級友たちが読んでいたのは『銀河英雄伝説』とか『魔界水滸伝』とか『宇宙皇子』とかで、『スレイヤーズ』は後から「似たようなもの」として記憶の中に紛れ込んだもののようにも思われる。なにぶん、昔のことなので、多少の混乱は仕方がない。
それはともかく、伝説のライトノベルスレイヤーズ』の第1巻を今日読み終えた。20年にはやや足りないが、それに近い失われた歳月を経て、ようやくかつての友人たちと肩を並べることができた。もっとも、当時の知人のほとんどは音信不通となっていて、もう『スレイヤーズ』を肴に語り合うことはできない。すべては取り返しのつかない過去の彼方へと消え去ってしまった。
リアルタイムで『スレイヤーズ』を読み耽った人々の熱狂を追体験することはかなわず、また往時を知らずに新鮮な気持ちで初めて触れる若い読者とともに味わうことも能わず、一抹の寂しさとともに分析的に読むことしかできなかった。それは通常の娯楽小説を読むときの態度とは全く違ったもので、素直に「面白い」とか「つまらない」とか感想を述べることすら憚られる。また、案の定、分析的に読んだからといって、何かを析出できたわけでもない。従って、この小説に対して語るべき言葉はほとんどない。
今回の新装版は毎月3冊ずつ出るそうで、今月は4巻から6巻まで出ることになっている。早売りしているところでは、もう店頭に並んでいるだろう。続けて買うかどうかは未定だが、とりあえず先月買った3巻までは読んでおくことにしようと思う。