あなたはひとりで映画をみたことがありますか?

見出しがあまり長くなると煩雑なので端折ったが、正確に書けばこうなる。
あなたは映画館に行ってひとりで映画をみたことがありますか?
この質問に対して「イエス」と答える人はごく稀だろう。毎日映画をみるような映画ファンならそういうこともあるかもしれないが、ふつうの人は映画館でひとりで映画をみる機会など滅多にないはずだ。
首を傾げた人はもう一度質問文をよく読み返してほしい。「あなたはひとりで映画館に行って映画をみたことがありますか?」ではない。客席に座っているのがただひとり、という状況で映画をみたことがあるかどうか、という質問です。
そんな質問をしてみたくなったのはほかでもない、今日、たったひとりで映画をみたからだ。もちろん、そんな経験は生まれて初めてだ*1
今日みた映画というのは、M・ナイト・シャマラン監督の新作「ハプニング」だ。「シックス・センス」の頃に比べるとあまり話題にならなくなったとはいえ、先週封切られたばかりの映画だし、閑古鳥が鳴くことはないはずなのだが、なぜかほかに客はいなかった。
いや、「なぜか」などとぼかす必要はない。今日「ハプニング」をみたのはシャッター街の外れの場末の映画館だったのだ。
今日は水曜日で平日だが、所用で休みをとってあった。ひとつめの用事が意外と早く終わり、ふたつめの用事の前に中途半端に時間があいてしまった。そこで、駅の近くにある商店街を探検してみようと思い立った。
その商店街に人が溢れかえった時代のことは知らないが、初めて訪れた20年前にはまだそれなりに客もいて、昼間からシャッターを降ろしている店はほとんどなかった。それが今ではどうだ。端から端まで歩いても、開いている店は1割もない。どの店もこの店も灰色のシャッターを降ろしたままで、その前に自動販売機を設置して封鎖しているところもある。先日、津山を訪れたときには、似たようなシャッター街の空き店舗に不動産会社の連絡先を書いた札が貼られているのが目についたが、こっちはそういうものもない。その代わりになぜかピースボートのポスターが貼られていた。
商店街の通路は古びたアーケードで覆われていて、夏場の強い日差しを避けるにはちょうどいいが、光熱費を節約するためか照明がついていないので、昼間でも薄暗い。全国どこでも見られるお馴染みの光景だ。アーケードの先端、外周道路付近では建物が撤去されて駐車場になっており、アーケードがトマソン化している。いっそ、金沢市横安江町商店街のようにアーケードを撤去してコミュニティバスを走らせトランジットモールにすればいいのに、と思ったが、まあ無理だろう。
アーケードを抜けて、焼けたアスファルトの道を歩くと、そこにも煤ぼけた商店が建ち並んでいる。近くにやたらと駐車場があり、自動車でアクセスに便利なためか、アーケード内に比べると開店率はやや高いが、どの店の看板も色褪せていて、辛うじて営業しているだけだとわかる。その街並みの一角に、映画館がひっそりと佇んでいた。
その映画館にはスクリーンがふたつあり、一方では「ハプニング」、もう一方では「巨乳妻メイド倶楽部/ご主人様いっぱい出して」がかかっていた。
シャッター街探検の最後の締めとして映画でもみようと思い、一瞬、どちらにしようか迷ったが、「巨乳はともかく、妻とメイドは相性が悪いよなぁ」と思って「ハプニング」のほうをみることにした。
さて、その「ハプニング」だが、今日は映画の感想文を長々と書く気分ではないので、「ひとりでみると怖かった」とだけ言っておこう。

*1:ただし、昨年9月ハウステンボスコムタチン・コムタチンミュージアムでひとりでコムタチン・コムタチン第2話をみたことがある。あのときはえらく気まずい思いをした。