ボーイズラブはセクハラなのか?

堺市立図書館に対する「市民の声」が面白い。

 現在、北図書館・南図書館・西図書館・中図書館という堺市の4つの大きな図書館において、一般に「BL(ボーイズラブ)」と称される少女向け男性同性愛の本が大量に開架されています。男性同士の性愛行為の描写まであり、しかも、そのような内容が一般に少女向けの本であることには驚きを隠せません。本の表紙は表も裏もともに「男性同士が抱き合っている・キスをしている」などの絵であり、多くの一般市民が利用する公共の施設に、このような破廉恥な表紙の本を一般図書と同じ書棚に並べて大量開架するとは、セクハラ以外のなにものでもなく、子どもに対する影響を心配する親のことをまったく考えていないという他ありません。

とりあえず冒頭の段落だけ引用した。次の段落では「市民の血税」云々というお馴染みの話題が書かれているので、興味のある方はリンク先を通読していただきたい。
さて、ボーイズラブである。
上の文中では「セクハラ以外のなにものでもなく」と強い語調で非難されているが、果たしてそうなのか? もしそうだとすれば、いったい誰に対するセクハラなのか? 相手は男性なのか、女性なのか? 大人なのか、子供なのか? 同性愛的傾向のある人なのか、そのような傾向の乏しい人なのか? 筆者がどのように考えているのか、この文面だけからではよくわからない*1
また、ボーイズラブがセクハラだとして、何らかの対応が必要だとすれば、書庫に仕舞い込むという方法が最善なのかどうか、ということも疑問に感じた。ふつう公立図書館には18禁コーナーはないが、そのようなコーナーを設けてはならないというきまりごとがあるのだろうか? もしゾーニングで何とかなるのなら、ボーイズラブに性的不快感を抱く人の目に触れないように隔離するだけで足りるのではないか? それとも、図書館利用者一般から遠ざけるのでなければならない特段の理由があるのだろうか?
いろいろ考えてみたが、どうもうまく考えがまとまらない。はてなブックマーク - BL図書を購入した趣旨や目的、またこれまでに購入した冊数及び購入費を教えてください:「市民の声」Q&A 広報・広聴 - 堺市を見れば何か考えるヒントが見つかるかと思ったが、まだ発展途上中のようで、見るべき意見は特になかった。
そうこうするうちに日付が変わってしまったので、今回はとりあえずこれでおしまい。何か新展開があれば、また取り上げてみることにしよう。

追記

予想以上に反応が多くてびっくりした。はてなブックマーク数はこの日記の中で最高*2となっている。現段階でコメント欄にも3件の投稿があり、うち1件にははてな匿名ダイアリーでコメントがつけられている。寄せられた意見についてレスをつけるのは控えておきますが、新規コメント大歓迎です。
新展開ということではない*3が、元記事のはてなブクマ経由で読んだ一人のゲイから見る、腐女子とボーイズラヴ作品−JanJanニュースという記事が興味深かった。ボーイズラブ*4は男性の同性愛に関する文芸だが、その実態からは相当かけ離れていると聞くが、実際のところ同性愛者の間でボーイズラブはどのように受け止められているのか少し気になっていたのだ。
で、読んでみると、非同性愛者の場合よりも事態は複雑だが、人によって考え方が違い一概には言えないということらしい。考えてみれば当たり前のことではあるのだが、「ゲイ」というひとつの語で包括されるからといって、個人個人の物の見方や考え方に一定の方向性があるわけではない。「市民」でも「子ども*5に対する影響を心配する親」でも同じことだが*6、言語表現のもつ規格化能力*7の射程と限界は意識しておいたほうがいい、と思った。

*1:もしかしたら「セクハラ」という語を拡大解釈して「被害者なきセクハラ」のようなものを考えているのかもしれない。後のほうでは「セクハラまがい」という表現もみられるので、そういう解釈もあり得るかもしれないと思ってしまった。

*2:ちなみに第2位は「DNA」についてぼやいてみる

*3:そもそも堺市立図書館の一件を受けて書かれた文章ではない。

*4:ボーイズラブ」か「ボーイズラヴ」か、というのは結構悩ましい問題ではあるのだが、今回は元記事の表記法にあわせて見出し及び本文で「ボーイズラブ」を採用したので、ここでもそれで通すことにする。

*5:「子ども」という表記はあまり好きではない。

*6:いや、「子どもに対する影響を心配する親」という規定の仕方だと、ボーイズラブに対して一定の見方をもっていることになるかもしれない。

*7:たぶん専門的な言い方があるのだろうと思うが、そっち方面の術語に通じていないので、やむを得ず自分で考えた言葉を使った。