「限界集落」問題を過不足なく理解する

今、Thscが面白い。ジャンルは異なるがあの頃の僕らは胸を痛めてブギーポップなんて読んでたに似たテイストの面白さだ。さっきブクマ経由でアクセスして、ついふふらと最初から全部読んでしまった。特に面白かったのは自己責任論で高齢化問題は解決する雪の柱だが、今回は限界集落を論じるための踏み絵を紹介しよう。
この記事は見出しはやや挑発的だが、内容は非常にまともで、論点整理がよく出来ている。次に小見出しのみ抜粋して掲げる。

  • 彼らはいずれいなくなる((c)チームセコウ)
  • 言葉の定義は本質だけ見ればいい
  • 放棄・撤退・維持・発展
  • 社会生活か、非社会生活か
  • 生活か、生計か
  • 中山間地域か、限界集落
  • 現住民か、集落か
  • 特定の集落か、全国の集落か
  • 住み慣れた場所には重力がある
  • とはいえ、集落は別にありがたいものではない
  • 金のことは考えなければならない
  • 住民は必ずしも被害者ではない
  • 村は理想郷ではない
  • だいたいおぬしら農業・林業したいのか

いわゆる「限界集落」問題について考える際に避けては通れない論点の数々が列挙されている。もしかしたらわずかな遺漏はあるかもしれないが、少なくとも的外れなものは一つもない。今後この問題について何らかの主張を行おうとする人は、ここに掲げられている要素をチェックして自説の強度を確認すべきだろうと思う。
ところで、この記事の冒頭でリンクされている「限界集落」は「いきいき集落」 東国原知事が発表 - MSN産経ニュースに関連していくつか関連するページにリンクしておく。

//mainichi.jp/seibu/seikei/news/20081007ddg041010004000c.html" title="限界集落:やる気なくすので「いきいき集落」と呼んで 東国原・宮崎県知事が発表 - 毎日jp(毎日新聞)">限界集落:やる気なくすので「いきいき集落」と呼んで 東国原・宮崎県知事が発表 - 毎日jp(毎日新聞):見出しがちょっとくどい。内容は産経とおまり違いはない。
//mytown.asahi.com/miyazaki/news.php?k_id=46000000810090002" title="asahi.com:中山間地域は「いきいき集落」-マイタウン宮崎">asahi.com:中山間地域は「いきいき集落」-マイタウン宮崎:産経、毎日より詳しい。「いきいき集落」が「限界集落」の言い換えではないと明記している。
//www.nishinippon.co.jp/nnp/item/52295" title="「いきいき集落」と呼んで 「限界集落」呼称に反発 宮崎県、公募し選定 / 西日本新聞">「いきいき集落」と呼んで 「限界集落」呼称に反発 宮崎県、公募し選定 / 西日本新聞:県や知事の姿勢に対する批判も併記している。
//www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kenmin/chiiki/genki/namaeboshu.html" title="宮崎県:元気な集落づくりに取り組む集落に対する「新たな呼称」が決定しました。">宮崎県:元気な集落づくりに取り組む集落に対する「新たな呼称」が決定しました。:県の広報記事。つづいて「いきいき集落」の募集も行われている。
//www3.pref.shimane.jp/hyoka/jigyou19/put_activity.asp?table_number=20060000004219" title="活動評価シート(平成19年度) - 島根県政策企画局政策企画監室政策スタッフ(行政評価担当)">活動評価シート(平成19年度) - 島根県政策企画局政策企画監室政策スタッフ(行政評価担当):前例その1。島根県の「いきいき集落営農推進事業」の自己評価に関する資料。この事業に関連して、奥出雲町いきいき集落営農推進事業費補助金交付要綱雲南市いきいき集落営農推進事業費補助金交付要綱なども。なお、私事だが、以前、木次線に乗ったあと知人に「どこに行ってきたの?」と訊かれたので「中国の雲南地方」と素直に答えたら変な顔をされた。
//www.town.nishinoshima.shimane.jp/town/pr/h19/k416/p6.7.pdf">いきいき集落づくり活性化事業【PDF】:前例その2。同じく島根県西ノ島町で平成14年度から5年間行われた事業。県費も入っているが「いきいき集落営農推進事業」とは直接関係はなさそう。

んー、なんだか雪国はつらつ条例を思い出すなぁ。「いきいき集落」が「いきぎれ集落」にならなきゃいいんだけど。
ついでなので、過去の記事にリンク。使いづらい「限界集落」の代わりに発案された「水源の里」*1にも言及していますので、興味のある方はご一読を。

追記

さっき、限界集落を論じるための踏み絵 - Thscを紹介したとき、ひとつよくわからないフレーズがあったのだが、本筋とは関係ないのでスルーしていた。

彼らはいずれいなくなる((c)チームセコウ)

その後、気になって調べてみたところ、このフレーズは

「貧困の再生産など起きない。彼らは子供さえ持てないからいずれいなくなるだろう」

というフレーズの捩りだということがわかった。チーム世耕 - アンサイクロペディアによれば、この言葉の出典は2006年9月12日(火)発売の週刊SPA!2006年9月19日号(49ページ)だそうだ。
ウィキペディアは間違いが多いので信用してはならないという話はよく聞くが、アンサイクロペディアについてはあまりそういった話を聞かないので、きっとアンサイクロペディアウィキペディアよりも信頼できるソースなのだろう*2。余談だが、松永久秀 - アンサイクロペディアによれば、松永久秀は日本で初めてクリスマスを理由に休戦をした人だそうだ。

*1:水源の里 - Google 検索でみると、トップに[ 地方分権改革推進委員会資料] 水源の里(限界集落)維持・再生への提言【PDF】という文書が引っかかった。

*2:ちなみにチーム世耕 - Wikipediaでは「貧困の再生産など起きない。彼らは子供さえ持てないからいずれいなくなるだろう」というフレーズは紹介されていない。