紛らわしい「海域公園」

3つとも同じ記事だが、何となく並べてみたくなった。
さて、唐突ですがここで問題です。次のうち環境省所管ではない公園はどれでしょう。

  1. 国立公園
  2. 国定公園
  3. 国営公園
  4. 国民公園

答えは公園 - Wikipediaで!
では本題に入ろう。
以前から国立公園や国定公園というのはややこしいものだと思っていた。まず名前からしてややこしい。「国立公園」と「国定公園」ではいったいどこがどう違うのが、字面の上では全く見当がつかない。英語表記だと国立公園は「National Park」、国定公園は「Quasi-National Park」だそうだが、それなら「国定公園」などと言わずに「準国立公園」と言えばずっとわかりやすいのに。
さらにややこしいのが、国立・国定公園内の区域の中に設けられた区分の名称だ。自然公園法第13条により指定される「特別地域」、同法第14条により特別地域の中に指定される「特別保護地区」、同法第15条により同じく特別地域の中に指定される「利用調整地区」、同法第24条により指定される「海中公園地区」、そして公園区域内で特別地域にも海中公園にも含まれない「普通地域」という区分があり、さらに自然公園法施行規則第9条の2により特別地域のうち特別保護地区を除く地域を「第一種特別地域」、「第二種特別地域」、「第三種特別地域」に分けることになっている。これだけの説明から、頭の中でそれぞれの区分を整理して論理的に秩序づけられる人は稀だろう。そこに今度は「海域公園地区」が加わるというのだから、もう何が何だか……。
「海中公園」と「海域公園」の違いも字面の上では全く見当がつかない。「海中」と「海域」の違いは何かと聞かれたら、たぶん大方の人はそれぞれの言葉と対になる言葉の違いを示すことだろう。「海中」と対になるのは「海上」、「海域」と対になるのは「陸域」だ。だがしかし、これでは「海中公園」と「海域公園」の違いを全く説明できないのだ。
現行の自然公園法では、特別地域は海面には指定できないことになっている。その代わりに海中公園という制度があって海面内に指定できるのだが、なんで「海面公園」ではないのかがよくわからない。というか、「海域/それ以外」という仕分けじゃダメだったのだろうか?
もう一つ不思議なのは「普通地域」だ。字面をみれば「域」なのだから海は関係なさそうなのだが、実際には国立・国定公園の区域のなかで、陸地の特別地域以外にも、海のうちで海中公園地区以外が普通地域に含まれる。そういや、「海中公園区」も今回の改正案の「海域公園区」も変だ。これがたとえば港湾法だと、「地域」とか「地区」という言葉は陸上の区域のみを指し、海や川などの水域は決して「地域」とも「地区」とも呼ばれることがないのに。
法令用語というのは日常語に比べて厳密さが求められるため、自然な語感をもとに用語を選んでばかりはいられないのはわかるのだが、どういうルールで言葉が成り立っているのか一見しただけではわからない似たような言葉がずらずらと出てくるのはまずいのではないか*1。今さら「国立公園」とか「海中公園地区」といった定着した用語は変えようはないかもしれないが、できれば「海域公園地区」という名称は別のもの*2にしてもらいたいものだ。

追記(2008/12/19)

「海域公園」について重要な続報があります。ぜひ「海域公園」のまぼろし、または讀賣新聞の誤報についてをご一読ください!

*1:この点については、以前書いた紛らわしい言葉は民主主義の敵だを参照されたい。見出しは煽りっぽくて少し反省しているが、そこで述べた主張は2年後の今でも全く変わっていない。

*2:わかりやすさを重視するなら「準海中公園地区」のような名称でいいのではないかと思う。