京品ホテルと派遣村
年末の旅行は当初東横イン品川駅高輪口を予約してあった。東横インの中で一、ニを争う稼働率で思い立ったらすぐ泊まれるということがまずないのだが、運良く12/28と12/29の2泊予約できたのだ。もちろん、これまでに泊まったことは一度もない。東横インの設備は標準化されているため、どこに泊まってもほとんど違いはない。その意味ではあまり面白みはないのだが、それでもあの東横イン品川駅高輪口に泊まれるのだと思うと胸弾む思いがした……というのは大げさだが。
だが、12/28の朝、重い荷物を担ぎながら品川駅前で信号待ちをしていた時、横断歩道の向かい側を見た瞬間、東横インへの憧れは一挙に霧消した。そこには、これまで見たこともない異形の建物が佇んでいたのだ。
それが京浜ホテルだった。
あ、違った。京品ホテルだ。
京品ホテルを見たのはこれが初めてというわけではない。以前、麺達七人衆-品達に行ったときにも京品ホテルの前を通っているから、その時にもあの優雅でクラシックな姿が視野に入っていたはずだ。でも記憶にない。近代建築に興味をもつようになったのはここ一、二年のことで、品川駅高輪口に降り立ったのはそれより前のこと*1だから、全然印象に残らなかったのだろう。人は見えるものすべてを見るわけではない。
さて、先ほど京品ホテルのことを「異形の建物」と表現した。最近、京品ホテルの前を通りかかった人ならよくご存じのことと思うが、垂れ幕や旗や張り紙などが所狭しと張られて/貼られていて、一種独特な雰囲気を醸し出しているのだ。ぴんとこない人は、以下のページに掲載されている写真をご覧いただきたい。
ああ、そういえばネットのニュースで見たような……と朧気ながら記憶が甦った。確か、ホテルのオーナーが借金のカタに土地建物を売っ払って、一斉解雇された従業員たちが自主営業しているんだったっけ? そこで、横断歩道を渡って京品ホテルの玄関前に行くと、署名活動の最中だった。署名用紙を持って立っている人に話を聞くと、今も営業中で、1泊あたり7000円のカンパで泊まれるという。東横インは1泊7140円*2だ。荷物は重く肩にのしかかっており、歩く距離が短ければ短いほどよい。さらに、一、二年前から近代建築に興味を抱くようになり、つい先日も博物館明治村と日本大正村をハシゴした*3ばかりだ。
なら迷うことはない。京品ホテルだ。
2階に上ってフロントで受付をして部屋に荷物を放り込み、東横インの予約をキャンセルしてから一路有明埠頭を目指して歩き出した。時はキリスト紀元弐阡捌年拾弐月廿捌日午前拾時過ぎ*4のことだった。
その後、東京都中央卸売市場食肉市場の傍を通り、レインボーブリッジのすぐ近くまで歩いたのだが、橋の入口がわからなかっので、仕方なくゆりかもめに一区間だけ乗り、テナント撤退が激しく人も少ない台場小香港の陳麻婆豆腐でむちゃくちゃ辛いばかりでさほど旨いとも思えない麻婆豆腐を食べてから歩いて東京国際展示場入りしたのは午後2時過ぎのことだった。
あー、だんだん書くのが面倒になってきた。ホテルに宿泊した感想とか、見出しに掲げたもう一つの話題である派遣村の話は省略。これでおしまい。