混童夢 −長崎県こども政策課vs.長崎県医療政策課

18歳未満へのコンドーム販売を自粛すべきだとする県少年保護育成条例9条第2項をめぐって続く静かな対立。「撤廃は若者の性行動を助長する」という教育担当者に対し、医療担当者は「性感染症が拡大している現実を理解していない」と訴える。それぞれの言い分を聞いた。(岡田玄)

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浦川末子・県こども政策局長は、性感染症対策でコンドームの有用性を認めながらも「条項撤廃で販売を解禁すれば、性の逸脱を県が認めることにならないか」と心配する。

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大串祐子・県こども未来課長は「罰則規定はなく、事実上、コンドームは購入できる。相手が18歳以上なら、そちらが購入すればよい」。だから、性感染症対策上は問題ないとの立場だ。

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浦川局長は、教員だった30年前に知ったある保護者を思い出す。「責任を持ちなさい」と、高校生の息子の定期券入れにコンドームを入れていた。その時は「なんてことをする親だろう」と違和感があった。「でも、今こそ家庭での性教育が必要」。教育を通して、社会の価値観を軌道修正したいという。

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県医療政策課は、性感染症予防の観点から「条例はナンセンス」と訴える。「性行動に走っているのは、ごく一部という認識を変えてほしい」

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同課の藤田利枝医師は「性体験のある生徒が3割もいて『ごく一部』と言えるのか。低用量ピルも解禁されており、中絶率の低下が無防備な性交渉の減少とは言い切れない」と主張する。

長崎県|組織概要|平成20年度 組織概要図ウェブ魚拓)によると、こども未来課はこども政策局の中にある。一方、医療政策課は福祉保健部の中にある。一方が「局」で他方が「部」というのはいったいどうしたことか、と疑問に思ってこの図をじっと見てみると、より大きな問題に気づいた。
長崎県には農林部はないのか?
いや、ないはずないよな。水産部があるのに農林部がないというのはおかしい。うーん。
で、さらによく見ると、どうもこの組織図は何かの本に掲載した図をスキャナーで取り込んだもののようだ。うっすらと裏のページが写ってしまっている。だが、ページ数の表示がどこにもない。もしかして、ページの下のほうが切れているのでは?
もうちょっとまともな組織図はないものかと思って探してみると、PDFだが長崎県行政機構図(平成20年4月1日現在)があった。よかった、農林部もちゃんとあったんだ!
長崎県の組織図を見ると、同じ「局」という文字が5種類ないし6種類の別の組織単位を表すために用いられていることがわかる。

出納局
地方自治法第171条第5項に基づく組織*1
交通局・病院局
地方公営企業法に基づく地方公営企業*2
こども政策局・科学技術振興局
知事部局の本庁に置かれた部局のうち、所属する課の数が1つないし2つのもの*3
まちづくり推進局
土木部の中にある、部と課室の間の中二階のような組織*4
県北振興局・島原振興局
本土地区に置かれた地方出先機関
五島地方局・壱岐地方局・対馬地方局
離島地区に置かれた地方出先機関

これらの「局」のうち出先機関の名称については「振興局」「地方局」でそれぞれひとまとまりの単位だと考えることができるが、残りは名称だけからでは県の組織内での位置づけがはっきりせず、非常にわかりづらいものになっている。同様の例は他の都道府県にもあり、国の機関でもかつて防衛庁に置かれていた防衛施設庁*5という凄い例がある。だから、長崎県だけを槍玉に挙げても仕方がないのだけど、もうちょっと何とか整理できないものかな、と思ってしまう。
……本題と全然関係ない話が長くなってしまった。
ええと、本題に入る前に力尽きてしまったので、最後に長崎県例規集から長崎県少年保護育成条例*6を見ておくことにする。

第9条 (略)

2 避妊用品自動販売機業者及び避妊用品に係る自動販売機管理責任者(以下「避妊用品自動販売機業者等」という。)並びに自動販売機によらず避妊用品を販売することを業とする者は、避妊用品を少年に販売し、又は贈与しないように努めるものとする。

あ、販売だけじゃなく贈与も対象になっているのか……。

*1:なぜか組織図には会計管理者が記載されていないが、特別職の出納長から一般職に格下げになったとはいえ、いちおう法律に明記されている役職なのだから組織図にも入れておくのが適切なのではないかと思う。

*2:PDF版の組織図では出納局との違いが目で見ただけでは明らかではないが、本から取り込んだ画像版では色分けしているので、2種類の「局」があることがわかるようになっている。なお、公営交通 - Wikipediaの「日本の公営交通一覧」をみると、交通局を設置している都道府県は東京都と長崎県だけとなっている。

*3:ほかに1課1室の「防災危機管理監」がある。PDF版では丸括弧で括られているので、おそらく組織名ではなく役職名だということなのだろう。なんで「防災危機管理局」という組織がないのだろうか?

*4:土木部は他の部に比べて課室数が多いので、都市政策関連課室を一般土木関連課室と分けて扱うことにしたのだろう。

*5:防衛庁の外局」と書けばすっきりするのだが、事情はそう簡単ではなかったようだ。防衛施設庁 - Wikipediaを参照のこと。

*6:例規集の体系では「第16編 教育委員会」の中に位置づけられているが、長崎県少年保護育成条例施行規則長崎県教育委員会規則ではなく長崎県規則になっていることから、この条例が知事部局所管であることがわかる。