一迅社文庫2009年5月刊行全3冊の感想
はじめに
先月、創刊1周年を迎えた一迅社文庫。正直いってこれほど長く続くとは思わなかった。
この1年はライトノベル業界にとって激動の年だった。たとえば、富士見ミステリー文庫が休刊したり、『涼宮ハルヒの驚愕』がやっぱり出なかったり、あとは……ええと特に思い浮かばないが、ともあれこの1年を乗り切って次の航海へと乗り出したライトノベル界の蟹工船の1周年記念ラインナップは看板作品『女帝・龍凰院麟音の初恋』と初起用作家2人の新規作品2本というもので、特に1周年らしい仕掛けはなかった。本当はもうひとつの看板作品『死神のキョウ』も出る予定だったそうだが、5月の予定が6月に延び、6月の予定が7月に延び、7月の予定が8月以降にまで延びてしまっているうちに作者の本拠地の業界がえらいことになってしまい、この先いったいどうなることやら大いに心配なのだが、それはともかく早速5月刊行分3冊の感想を書く。例によって読んだ順。
女帝・龍凰院麟音の初恋3
- 作者: 風見周,水月悠
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2009/05/20
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文芸部発マイソロジー
- 作者: 早矢塚かつや,きくらげ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2009/05/20
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10年くらい前に『二重螺旋の悪魔』(上巻/下巻)を読んだときのことをふと思い出した。どちらも人為的に引き起こされた世界の危機に対して超人的な能力をもつ主人公が立ち向かうジェットコースター・ノベルだ。一難去ってまた一難、スリルとバトルが連続して落ち着く間もない。で、読み終えたときに「んー、あんまり捻りがなかったなぁ」という読後感を抱いたという点でも似ている。
これはまあ、ないものねだりということになるのだろうが、構成上の妙、というものに心に惹かれる読者にとっては今ひとつ物足りないのも確かだ。ネット上の情報によれば『文芸部発マイソロジー』はかなり売れ行きが良好なようで、この分だと続きが出そうな気もするが、もし次があるなら設定やプロットに仕掛けを施してもらいたいものだ。
イスノキオーバーロード
- 作者: 貴島吉志,AKIRA
- 出版社/メーカー: 一迅社
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おわりに
あと2週間もすれば今月の新刊が出るが、今度は何と4冊だ。4月も4冊だったが、思わぬ傑作『星図詠のリーナ』をはじめ、どれも読みやすくて一定水準以上の作品ばかりだった。それに比べると今月はやや不安。
いや、それより心配なのが来月のラインアップだ。十文字青2冊同時発売ってどうよ?