「そういうわけにはいかないだろう」を禁止したいが、そういうわけにはいかないだろう

現状を否定し大胆な改変を提案するような意見が示されたとき、その意見に含まれる具体的な難点を指摘して反論するのではなく、ただ一言「そういうわけにはいかないだろう」と言うだけで退けてしまう、ということがよくある。ことさら細部に拘るまでもなく無理筋だと一見してわかる場合はいいが、ある程度筋が通っていて検討に値する意見の場合でも、それが単に今の常識や慣習と摩擦を生じるというだけの理由で「そういうわけにはいかないだろう」と言ってしまうのは、知的誠実さの欠如の表明であると同時に、将来得られるかもしれない利益をみすみす逃してしまう愚行といえる。
思考停止を招くマジックワード「そういうわけにはいかないだろう」は団子として、もとい、断乎として拒否すべきだ。
だが、実際問題として議論を行う際に「そういうわけにはいかないだろう」なしで済ませるのは困難だ。不可能ではないかもしれないが、いろいろと具合が悪いだろう。具体的にどんな問題が生じるのかは今とっさに思いつかないが、「そういうわけにはいかないだろう」の放逐は、帰省の常識や慣習と馴染まない。やはり物事はほどほどがいちばんではないか。便利なマジックワードを禁止して波風立てるより、その日その日を平穏無事に過ごしたいものだ。