目を覚ませ、それは肉食獣だ さあ、ハンターを育成する作業にもどるんだ

畑の作物や植林の樹皮を食い荒らすシカやイノシシ駆除の切り札として、海外から輸入したオオカミを野に放つ計画が、大分県豊後大野市で浮上している。国内での実例はないが、米国の世界自然遺産イエローストーン国立公園で実績があるという。食害に頭を悩ます市は来年度、手始めにシカの生息数などの調査に乗り出す方針だが、専門家の間では、生態系の崩壊に加え、人や家畜が襲われる危険への懸念が強く、論議を呼んでいる。

【略】

今回浮上したオオカミの投入計画は、獣医師や大学教授らで作る「日本オオカミ協会」(東京、240人)が提案しており、橋本祐輔市長らが今年に入り、「対策の切り札にならないか」と検討を始めた。国内に実例はないが、協会には四国の自治体などから問い合わせが入っているという。

かつて国内に生息したニホンオオカミは乱獲などで100年ほど前に絶滅したため、協会は、ニホンオオカミの亜種ハイイロオオカミを中国やロシアから輸入することを勧めている。国内ではすでにペットなどとして個人的に輸入する人がいるという。

ニホンオオカミの亜種ハイイロオオカミ」という表現も気になったが、それよりペット目的でオオカミが輸入されているという話のほうがもっと気になった。オオカミはワシントン条約で輸出入が原則として禁止されているのではなかったか? でも、ここで調べてみると、中国やロシア産のオオカミは規制の緩い付属書II*1に掲載されているようだ。
輸入は可能でも、肉食獣を勝手に放逐してはいけないだろう。確か、特定動物という制度があったはず。しかし、調べてみると、動物の愛護及び管理に関する法律には、特定動物を意図的に放逐する行為を処罰する明文規定は見あたらなかった。いや、飼育目的が放逐という段階でアウトか? このあたりの法律には詳しくないので、ご存じの方は教えてください。
オオカミ導入を検討している豊後大野市の一部は祖母傾国定公園に指定されていて、自然公園法第21条第3項で動物を放つことが禁止されている特別保護地区もある。とはいえ、特別保護地区の外で動物を放って、それが勝手に特別保護地区に移動することを法的に規制することはできない。その一帯は野生動物の宝庫だそうなので、かなりまずいことになるのではないか。

国定公園。原生林の深い森にはカケス、オオルリ、コリルといった野鳥やムササビ、モモンガ、ツキノワグマニホンカモシカなど珍しい野生の動物も生息しています。頂上からは九州の屋根を一望でき、まさに「九州のアルプス」を見られます。

大変だ! ツキノワグマもいるらしい。
さあ、今こそ日本熊森協会の出番だ。日本オオカミ協会と対決して絶滅寸前のクマを救うんだ!
……てな冗談はさておき*2、冒頭で引用した記事に数行追加してオオカミでイノシシ駆除、計画に「危険」指摘もと見出しを変えたものを発見した。元記事のほうは魚拓がとられているが、こちらは魚拓禁止になっているので、末尾に追加された箇所を引用しておく。

また、環境省野生生物課も「オオカミが人や家畜を襲わないという証明はされていない」としており、豊後大野市に隣接する竹田市で60頭の肉牛を飼う畜産業釘宮永路さん(50)は「牧草を食べに頻繁に現れるシカやイノシシを追い、オオカミが人里に下ってこないか」と表情を曇らせる。

しかし、ほかに有効な対策を見いだせない実情もあり、橋本市長は「十分議論を重ね、計画の実現を模索したい」と話している。(堀米千恵、長野浩一)

*1:ローマ数字を使うのが不安なので、ローマ字のアイをふたつ重ねてみた。

*2:どの辺りが冗談なのかいちいち説明するのは野暮だと思うので省略する。