山形県のニホンジカ

絶滅したはずのニホンジカが「現れた」というのと「生きていました」というのとでは意味が全然違う。後者は、見出しだけみると、山形県で絶滅したと思われていたニホンジカが実は生きていたという、人間側の判断の誤りを強く想起させる。しかし、たぶん事実はそうではなくて、ニホンジカ側の状況の変化によるものだろう。要するに、他県からニホンジカが県境を越えて山形県へやってきたということだ。
生物種が端的に絶滅した場合、ほかのところから入ってきて再び現れることはないが、山形県ニホンジカの場合は端的な絶滅ではなく地域絶滅なのでこういったことが起こる。本当は両者を区別しておいたほうがいいのだろうが、レッドデータブックやまがた動物編の分類群別掲載種とカテゴリ−区分【PDF】をみると、オオカミもカワウソもイノシシもニホンジカもみな「EX」、つまり「絶滅」とカテゴライズされている。他の都道府県版レッドデータブックでも同様だろう*1
ちなみに、ニホンジカの地理的分布については、少し古い資料だが、第2回 自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書2 ニホンジカの地理的分布とその要因*2が詳しい。また、全国分布メッシュ比較図【PDF】も参照されたい。この地図をみると、全般的にニホンジカの分布域が拡大傾向にあるのが見てとれる。特に北海道西部、岩手県群馬県高知県あたりが凄いことになっているようだ。

*1:日本のレッドデータ検索システム都道府県版レッドデータブックのカテゴリー名の一覧表【PDF】をみると、鹿児島県版の植物編には「地域絶滅」というカテゴリーがあると記載されているが、鹿児島県:鹿児島県レッドデータブックの概要の総括表には「地域絶滅」というカテゴリーはない。

*2:本題とは関係ないが、執筆者の中に日本オオカミ協会会長も入っているのが興味深かった。