生醤油(なましょうゆ/なまじょうゆ)

なお、和風ソースは市場に出回りにくい生醤油(なまじょうゆ:製造過程で火入れによる殺菌を一切行っておらず、火入れと同等のろ過による殺菌処理を行った香り高い醤油)をベースとしており、飲料用として作られた国内産のぶどう酢(「バルサミコ酢」に近い味わいのマイルドな果実酢)をソースに使用しているとのことです。

※リリースのPDFファイルにはなぜか「きじょうゆ」ではなく「なまじょうゆ」とわざわざふりがなまで入っています

「生醤油」は「きじょうゆ」と読むものだとばかり思っていたので、これはちょっと意外だった。「き」と「なま」は同じなのだろうか? それとも違うのだろうか?

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21世紀の公共交通はライターになれるか?

つまり、だ。

公共交通の利用に戻ろうという呼びかけは、木片や火打ち石で火を熾そうと言っているようなもの。

そうではなく、公共交通の利用という21世紀の新しい概念を理解させるところから始めなければならないのではないか、と思う。

とりあえず引用は最小限にしておくが、何が「つまり」なのか、ぜひ原文を最初から読んで確認されたい。
さて、上の文中では公共交通は「木片や火打ち石」に喩えられているのだが、話の都合上、木片のほうは無視して火打ち石のみに絞って考えることにしよう。
昔から人々は火打ち石で火を熾してきた。江戸時代くらいまでの人は、火を熾すのに火打ち石を使うことに何の疑問も感じなかったはずだ。それが当たり前で、いちばん便利な方法なのだったからだ。
ところが、文明開化の時代に状況はがらりと変わる。マッチが輸入され、やがて国内でも生産されるようになったのだ。マッチは人々の日常生活に入り込み、やがて火打ち石を駆逐した。たぶん明治の終わりか大正の頃には、火を熾すのに火打ち石を使う人はごく少数になっていたことだろう。単なる知識として、火打ち石という道具があったことを知っている人はもちろんその後もいたが、それを実際に使おうなどと考えるのはごく一部の変人だけだ。火打ち石は生活の場からすっかりなくなってしまった。
だが、それでは終わらなかった。火打ち石と燃料をセットにして簡単に火が付けられるようにした道具が20世紀の中ほどから普及し始めたのだ。すなわちライターの登場*1である。
ライターは改良につぐ改良で利便性を高め、また「100円ライター」と呼ばれる安価な製品も広く出回るようになり、次第にマッチの活躍の場を狭めていくようになった。もちろん、かつてマッチが原始的な火打ち石を駆逐したのと同じではないけれども。また、昨今では電気器具の普及や喫煙習慣の衰退により、日常生活で火を熾す場そのものが減ってきているので、単純にライターの天下とは言えない面もある。とはいえ、枝葉を切り捨ててまとめれば、いったんはほとんど滅び去った火打ち石がライターに進化することによって目覚ましい復活を遂げた、と言うことができるだろう。
では、公共交通はどうか? 交通分野におけるマッチたる自家用車に負け続けたまま衰退の一途を辿るのか、それともより利便性の高いライターとして生まれ変わり、再び栄光の座に就くのか? 今のところ、もし仮に公共交通が素晴らしく進化を遂げたとしても、自家用車普及以前のそれと同じ地位を占めることはないだろう、という程度のことしか言えない。それはちょうど、ライターがマッチ普及以前の火打ち石と同程度まで、すなわち火を熾す場面のほとんどで使われる程度にまで、勢力を拡大できなかったのと同じだ。
もう少し火打ち石のたとえを続けよう。
ライターが普及した最大の理由は、その利便性、使いやすさだということは疑いえない。だが、もしライターを売り込む初期段階で「改良版火打ち石」などと銘打っていたら、これほど世に広まらなかっただろうことは容易に想像できる。発火の原理は火打ち石と同じでも、それを人々が特に意識することがない、というのが一つのポイントだったろう。
公共交通機関の中で特に衰退の激しいものに路面電車がある。今でも地方のいくつかの都市では走っているものの、時代遅れで古めかしい乗り物だというイメージがつきまとっていて、道路渋滞の原因となる邪魔者と捉えられることも多かった。ところが、ここ数年、路面電車LRTという名で俄に脚光を浴びるようになってきた*2。時にLRT新交通システムの代表であるかのように語られる*3こともあるが、基本的には路面電車と同じものだ*4。火打ち石とライターほども違っているわけではない。以前、関西でLRT導入を進めている某政令指定都市で開催されたシンポジウムに行ったところ、国土交通省出身で市に出向している技官がLRTのことを「全く新しい交通システム」としきりに強調していて、閉口したことがある。だが、今になって考え直してみると、21世紀の公共交通の復権のためには、多少のハッタリはやむを得ないのかもしれない。
このように書くとLRT推進派のようだが、本当のところはLRTにはあまりたいした可能性はないのではないかと思っている。詳しい説明は別の機会に譲るが、LRTが他の交通機関より優位に立つ条件はかなり厳しく、自家用車と張り合える公算はかなり低い。むしろ、交通分野におけるライター候補はバスではないかと思っている。
えっ、DMV? うーん、ごにょごにょ。

*1:ライター - Wikipediaによれば、日本で最初に実用化されたライターは平賀源内が発明したものだという。それは知らなかったが、以前神戸らんぷミュージアム田中久重が製造したライターを見たことがある。どちらも江戸時代の作だ。ただし、一般庶民の生活にライターが浸透するのはマッチより後のことなのは確かだ。本文の「登場」はそのような意味で用いられているものと解されたい。

*2:鉄道ファンの間ではLRTはここ数年と言わず20年くらい前からよく知られた乗り物だったが、ライターの場合と同じく、ここでは一般の人々への浸透度合いを基準としている。

*3:以前は「新交通システム」といえば、主として高架軌道を自動運行するニュートラムポートライナーのような交通機関を指すのが一般的だった。

*4:と断言すると語弊があるかもしれない。広義のLRTの中には路面電車とは全く異なるシステムの交通機関も含まれるので。ただし、日本でLRTについて語る際には路面電車の進化形としての狭義のLRTが念頭に置かれることが多いのも事実だ。