菓子は鎧、菓子は盾

GOSICK』シリーズ初の短篇集、ただしストーリーはゆるやかに繋がっている。
キャラクターの魅力を引き立たせるためのエピソードを中心に構成されているので、ミステリとしての仕掛けには無理があるのだが、通俗冒険活劇譚として読めば、さほど気にならない。*1
作中の時間では既刊4冊より前の話なので、あとがきで作者自身が言っているように『GOSICK』シリーズを読むのが初めての人でも差し支えない。でも、作中のある仕掛け*2のことを考えると、やっぱり刊行順に読んだほうがいいかもしれない。
ところで、ヴィクトリカが身の回りに菓子を撒き散らかすのは、単に彼女がルーズだからではなくて、別の意味があるのではないか。詳しく検討する余裕はない*3けれど、彼女が九城一弥が差し出した和菓子を素直に食べることは象徴的だと思う。

*1:ただ、243ページのパズルはさすがにちょっといかがなものかと思う。

*2:偶然だが、昨年これと同じ仕掛けを用いたミステリ長篇が出た。無茶苦茶分厚い2巻本で辟易したことを思い出す。もちろん、『GOSICKs』のほうが数段面白い。

*3:時間的余裕以上に分析のための技能も知識もない。識者の卓見に期待したい。