シリーズ完結篇。これでおしまいかと思うと、ちょっと寂しい気もするが、シリーズの流れからすると、あまり引っ張ることもできないので、引き際がよかったと誉めるべきかもしれない。
BAD_TRIP(8/21付)の感想文の冒頭でいきなりネタを割っている。
じょ、定石ですか……。
(以下、『平井骸惚此中ニ有リ 其伍』の内容に触れるので、注意!)
トリックが斬新なわけでもない、というのは確かにそうなんだけれど、それを言ったら『双頭の悪魔』もトリック自体が斬新なわけじゃない。ここは素直にトリックの展開の仕方に工夫があることを評価したい。
細かくいえば、大仕掛けを用いているせいであちこちに無理がある。たとえば、本来の犯行計画では「首のない死体」は不要で、「顔のない死体」で十分だった*1のではないか、とか。でも、ミステリとしての詰めの甘さよりも、むしろ、シリーズ最終作としての積めの甘さのほうが気になった。「この人」の正体をぼかしたまま幕を閉じるのはいかがなものか。
というわけで、手放しで誉める気にはならないのだけど、富士見ミステリー文庫といういろいろと制約の大きそうなレーベルで謎解きを主眼としたミステリ連作を書き貫いたのは凄いと思った。次作にも期待したい。

*1:両者の違いについては『囲碁殺人事件』に解説があるので、興味のある人は参照してほしい。