水に落ちた犬は叩け

「賢い人なら、水に落ちた犬を見かけたらどうするだろう?」とブラウン神父が尋ねた。
「そりゃ、棒か何かで叩くでしょう」とフランボウが答える。
「では、水際を歩いている犬を見かけたら?」
「隙をみて水の中に突き落とします」
「なるほど」そこで神父は少し考えてから最後の質問を発した。「犬が水際から離れていたらどうするね?」
フランボウもしばらく考えて、次のように答えた。
「水際に誘い出しますね。『こっちの水は甘いぞ』ってね。それが賢い人のやり方です」
ブラウン神父は満足そうに頷いた。
「そう、賢い人なら、犬を水際に誘い出し、隙をみて水の中に突き落とし、しかるのちに棒で叩く。さすれば、いかに強大で獰猛な犬でも仕留めることができるのじゃ」
フランボウには神父の言葉の意味が掴みかねたが、それでも黙って続きを待った。
「1905年のンガンダ動乱のときに、東軍のグランジュ将軍がとった戦略はまさにこれじゃった。『水に落ちた犬は叩け、落ちていないなら突き落とせ、水際にいなければ誘い出せ』とな」