1+1=2

「1+1=2」という式の意味は次のどちらか?

  1. 1と1を足し合わせたものは2と等しい。
  2. 1と1を足し合わせると2になる。

記号「=」の意味から考えると、当然1のほうだということになる。だが、小学校の算数の計算問題で「1+1=」という問題が出されたときに、「1+1」とか「5-3」とかそういった答えを書いたら、まず確実にバツにされてしまうだろう。計算問題の解答者は2の解釈をとることを求められている。
ただし、これは記号「=」に「両辺が等しい」という意味以外に「左辺を計算した結果右辺が得られる」という意味が別にあるということ、言い換えればこの記号が多義的であるということではない。「=」はあくまでも同一性記号であり、それ以外の意味をもつわけではない。
日常言語ではよく知られたことだが、算数や数学で用いる数式でさえも言外の含みによって解釈が左右される。そういうことなのだ。意味と含みは峻別しなければならない。
では、数式が多義的であることはないのか? 全くないとは言い切れない。たとえば、「10-5-3=」という計算問題を考えてみよう。それぞれの項が指示する数、記号「-」「=」の意味だけからでは、この問題の答えは一つには定まらない。

  1. 10から5を引き去り、さらにその残りから3を引き去る。すると2が残る。
  2. 10から、5から3を引き去った残りを引き去る。すると8が残る。

これは、数式を構成する要素にではなく、数式の構造に由来する多義性である。構文的多義性と呼ばれる。こんなところで多義的だと困るので、通常、引き算が連続するときには書かれた順で計算するということになっている。これにより、引き算の構文的多義性は解消される。
では、この「引き算が連続するときには書かれた順で計算する」というのは、「10-5-3=2」という数式に埋め込まれたものだろうか? それともこの数式を外から制御するルールだろうか? もし後者だとすると、先にみた「1+1=2」の例と同じく言外の含みとみなすべきだろうか?