合掌

個人的に縁があったわけではないけれど、日本におけるウィトゲンシュタイン研究の第一人者として高く評価されている人だということは知っていた。口の悪い人は「ウィトゲンシュタイン大明神の神主」などと揶揄していたが、これも見方を変えれば勲章だ。
一度だけ、何かのセミナーか講演会で奥教授の発表を聴いたことがある。「ウィトゲンシュタインウィーン学団に大きな影響を与えたが、ポパーはほとんどウィーン学団に影響を与えていない」というような内容だった。その時は、なんでそんな当たり前のことを力説するのだろうか、と不思議に思ったのだが、今から考えれば、その頃にポパーウィーン学団の関係に着目する動きがあって、それに対する反論だったのではないかとも思う。根拠のない憶測に過ぎないが。
ともあれ、惜しい人をなくしたものだ。まだ大往生というには早すぎる年齢なのに。