四人四色電撃大賞
- 作者: 小河正岳,戸部淑
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- 作者: 来楽零,柳原澪
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- 作者: 支倉凍砂,文倉十
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- 作者: 杉井光,かわぎしけいたろう
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1冊ずつ感想文を書くのはしんどいので、まとめて短くコメントしておこう。
4冊通読して思ったのは、大賞〜金賞〜銀賞のレベルの差があまり感じられなかったということ。大賞の賞金は100万円で、金賞はその半分の50万円、銀賞だと30万円だから、面白さが賞金の額に比例するとすれば、銀賞受賞作の面白さは大賞受賞作の1/3以下ということになるが、賞金額は営業戦略によって決まっているものだから、もちろんこんな比較に意味はない。ただ、賞にランクづけしているのは事実なので、それに見合った格差があるものかと思っていた*1のだが、受賞後の手直しの成果か、作品の完成度という点では4作品ともほぼ同じ水準だったように思う。
ただ、強いていえば金賞受賞作の『哀しみキメラ』と銀賞受賞作のひとつ『火目の巫女』が伝奇小説特有のサスペンスで読者を惹きつけるのに対して、大賞受賞作の『お留守バンシー』にはそのような読ませる装置なしに書き貫いていて、いちばん底力があるのではないかと思った。後味もすっきりしている。これなら続篇が出ても安心して読めそうだ。
『哀しみキメラ』は現代の日本が舞台で、『火目の巫女』はたぶん平安時代の日本をモデルにした異世界が舞台なので、その意味では全然違っているが、いくつかのモティーフが共通しており、やや似通った印象を受けた。どちらも、どうやってもハッピーエンドにはなりそうもないストーリー展開なので、救いようのない結末を迎えるのかと身構えて読み進めたが、安直なアンハッピーエンドにならないところがよかった。ただし、両作とも、同じキャラクターの後日談という形での続篇は書けないだろうし、もし無理矢理書いてしまっても、あまり読みたいとは思わない。
最後にもうひとつの銀賞受賞作『狼と香辛料』だが、中世ヨーロッパ風の世界*2というライトノベルにありがちな舞台設定ながら、扱っているテーマが童門冬二みたいで、全然ラノベ的ではない。こことかここを見るといちばん評価が高い*3ようなので、ライトノベルを読み込んでいる人ほど新鮮に感じられるのだろう。はっきりと続篇を予告した終わり方になっていて、現段階では評価しづらいのだが、もしかすると今回の受賞作家のうちいちばん大化けする可能性があるのは支倉凍砂かもしれない。
各作品とも、あら探しをすればいろいろと欠点も見つかるのかもしれないが、基本的にミステリ以外の小説はあら探しをしないことにしている*4ので、全部素直に楽しめた。
最後に、各作品への選評にリンクしておこう。