煽りと陰謀

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

この本のオビに大きく

京都議定書を守るニッポンはバカである!
科学的見地から「正論」を斬る
と書かれているので気になって買った。
その京都議定書については「第一章 地球温暖化問題のウソとホント」で述べられているが、著者の専門外だということで、他人の意見の紹介に留まっていた。「第二章 ダイオキシン問題のウソとホント」も同様。
著者の主張が全面的に展開されるのは「第三章 外来種問題のウソとホント」「第四章 自然保護のウソとホント」で、この二章はなかなか面白い。槍玉に挙げられた加藤尚武がちょっと可哀想だったけれど。
環境問題にはさまざまな要因が複雑に絡み合っていて、諸要因の優先順位を定めるのも難しいため、明快な筋道で一刀両断にできないことが当たり前だ。逆にいえば、明快な筋道で問題を一刀両断にしているような論には、何か見落としか意図的な単純化があると疑ってみるべきだ。そんなことをこの本を読みながら考えた。もちろん、知らない間に一般常識になってしまって何となく受け入れてしまっている考え方への対抗意見としては有効なのだが。
ただ、随所に見られる陰謀論めいた書きぶりはどうにかならなかったものか。書きたくなるのはわかるが、これでは泥仕合のもとだ。ただすべき事態についてはただし、なぜそのような事態が生じたかについては書かずに読者の想像に委ねるほうがよかったのではないだろうか。