細く曲がりくねった山道を……

昔どこかで聞いた話。
ある人が友人の山荘に招かれて山道を歩いていると、その前を腰の曲がったおばあさんが杖をつきながら歩いていた。その人は軽く会釈しておばあさんを追い抜いたが、しばらく歩き続けるとまたおばあさんが前を歩いていた。
どう見てもさっき追い抜いたおばあさんと同じ人に見えた。もしかしたら自分の知らない近道があるのかもしれないと思い、無理矢理自分を納得させておばあさんを追い抜いた。ところが、またしばらく歩いていると、同じおばあさんが前を歩いているではないか。いくら曲がりくねった山道とはいえ、近道がそういくつもあるわけではないだろうし、そもそも途中で分かれ道などひとつも見あたらなかった。
その人は怖くなって駆け足でおばあさんを追い抜き、そのまま小走りで友人の山荘にたどり着いた。すると、そこにさっきのおばあさんがいた!
おばあさんはその人を見てびっくりしたように言った。「あれ〜、あんたなんべんもわしを追い抜いといて、なんでこんなに到着が遅れたかね〜」