プロとアマチュアの差


天城一は『密室犯罪学教程』や「密室作法」の中で、「密室トリックは困難なものでもないし、天才でなければ思いつけない高い水準の独創を必要とするものではない」と述べている。これは、ある意味では正しい。たしかに、密室トリックを考え出すのは容易なことだろう。しかし、ある意味では間違っている。プロの探偵作家が「密室トリックを考え出すのは難しい」と言う場合、それは「読者にとって印象的かつ面白い密室トリックを考え出すのは難しい」という意味なのだ。
【略】
一般の読者は、"密室トリック"を楽しみたいのではない。密室トリックを用いたミステリーを楽しみたいのだ。そして、プロ作家はそれを理解しているが、アマチュア作家は理解していない。つまり、天城一の発想はアマチュアなのだ。*1
飯城勇三「不思議の国の犯罪物語」,飯城勇三編『天城一読本甲影会(2006),p.33

*1:文中の強調部分は、原文ではすべて傍点。EQ風の雰囲気を壊してしまい申し訳ない。