ゴシックロマンス
GOSICKs(2) ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車― (富士見ミステリー文庫)
- 作者: 桜庭一樹,武田日向
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/05/10
- メディア: 文庫
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だが、強いてミステリの文脈に引きつけて読む必要もないだろう。このシリーズのポイントは何といってもヴィクトリカと一弥の微妙な関係にある。ただの友達というには密接過ぎるし、かといって恋人同士では決してない。では「友達以上恋人未満」ということなのかといえば、どうもそうでもなさそうだ。ふたりの関係は、友達と恋人を結ぶ直線上を動く点のようでいて、その軌跡を辿ってみれば少し直線から外れているようにも見える。軌跡を延長すれば、その先にあるのはもしかしたら戦友かもしれない。
そんなことを思いつつネットを巡回していると、REVの日記 @はてな - ゴシックシリーズの短編集第二弾の感想の随想が印象に残った。や、こりゃ面白い。
閑話休題。
先ほどヴィクトリカと一弥の関係がポイントだと言ったばかりだが、実を言えばこの本の中でいちばん興味深かったのは第六話「初恋」だった。タイトルがいい。もちろん、同じタイトルの小説はいくらでもあるのだが、この作品は初恋の話では全然ない。では的はずれなタイトルなのかといえばさにあらず、これほどぴったりとしたタイトルは他に考えられないと思われるほどだ。さらに、このタイトルは作品をして一種のリドルストーリーたらしめている……というのはちょっと妄想がかった考えかもしれないけれど。
ついでに妄想をさらに進めてみる。小説の作者と作中人物を同一視するのは危険なのだが、第三話「夏から遠ざかる列車」に登場するミス・ラフィットの性格や言動が「GOSICK」などのあとがきや作者の日記に書かれているそれ*3とそっくりだと思った。どこが似ているのかを説明するのはいろんな意味で困難だ。各自読み比べて確かめられたし。なお「全然似てないよ〜」という抗議は受けつけないのであらかじめ了知被致度候。