読めた! 読めたよ! よかったよ!

ボクのセカイをまもるヒトex (電撃文庫)

ボクのセカイをまもるヒトex (電撃文庫)

長らく読書意欲不振が続いていて、ライトノベルすら読む気が全然起こらず、日々のアクセス数は激減して*1、鬱々とした日々が続き、物事を悪いほうへ悪いほうへと考えるようになってしまい、ああこのまま一生ライトノベルが読めない体になってしまったのだろうか、いや別にライトノベルだけ読めないというなら構わないけれどミステリもSFも読めないとなると大変だ、ともあれ今何かの事情で突然死してしまったら「安眠練炭がその生涯の最後に読んだライトノベルは『狼と香辛料 (3) (電撃文庫)』であった」などと後世の歴史書に書かれてしまう、いやだなぁ*2、などと妙なことを考えてしまった。もちろん、後世の歴史書云々は完全な妄想であって、無名人が何を読んで死のうが通常は話のネタにすらならないものだ。これが現実というものだ。ああ、現実って残酷だよなぁ、辛いよなぁ。
そんなところに谷川流の新作の登場ですよ、奥さん*3
いま「新作」と書いたが、確かこれは電撃「マ)王*4掲載作をまとめたものだから、たぶん最新作ということはないのだろう。初出一覧がないので、どんな連載形態だったのかわからないが、この本では第一章〜第四章+あとがきという形で収録されている。タイトルの「ex」はたぶん「extra」のことだと思うが、もしかしたら別の言葉の略かもしれない。まあ、どうだっていいことだが。
文体は本篇と同じで、やる気のなさそうな脱力調。それでも本篇は粗筋だけなら立派な「現代学園異能」だが、こっちは徹底的にどうでもいい番外篇ばかりをおさめている。同じ作者の「ハルヒ」シリーズのほうは、雑誌連載でも話が進んでいるので時系列がぐちゃぐちゃになって読みにくいが、その意味では親切設計だ。電撃での前作『電撃!! イージス5』は妙に中途半端で力が抜け切れていなかったせいか2巻で終了したが、今度は徹底的にへたれているのでもう少し長続きするだろう。このまま「このラノ」1位になんかならず、アニメ化もせず、ムック本も出ず、AV化もせずに、マイペースで10巻くらい続いてほしいものだ。できれば、その合間に『学校を出よう!』も……というのは高望みのしすぎか。
さて、この種の作品に対してしゃかりきになって真面目な読解を企てるのは野暮の極み、的はずれもいいところなので、控えておくのが賢明なのだと思うが、ひとつだけ気づいたことを書いておこう。それは第四章だけ前三章と作品の色合いが違っているということだ。どうでもいいお料理対決というメイン(?)ストーリーの背後で、何の脈絡もなく進行するもう一つの物語。「ハルヒ」の長門有希を三人称で書けばこんな感じになるのだろう。ああ、SFマインド丸出しだ。ああ、これだよこれ。これこそが谷川テイストだ。
というわけで、たいそう楽しく読めました。
よし、これでまだライトノベルを読むことができるとわかった。次は国内ミステリ、ついで海外ミステリ、SFの順で読んでいくことにしよう。

*1:アクセス数だけが頼りというわけではないが、でもやっぱり日記更新のための主要なモチベーションのひとつであるのは確かなのです。

*2:えっと、『狼と香辛料』がダメな小説だというのではなくて、人生の最後には相応しくないだろう、という意味です。念のため。

*3:「奥さん/ご主人」という物言いが差別的だと思う人は「奥」姓の人への呼びかけだと思って頂いても構わない。ただし、これは言葉の勢いで書いただけで、実は別に特定の誰への呼びかけでもない。

*4:本当の誌名は「電撃」と「王」の間に「魔」の略字が入るそうだが、そんな略字は書けないので公式サイトの表記に従う。