書評は相撲ではない

書評家は作家とがっぷり四つに組んで相撲をとるのではない。書評家は力士ではなく、作家もまた力士ではない。力士が書評を書くことがあったとしても、彼は書評で相撲をとっているわけではない。書評には土俵もなく、行司もいない。
書評は言葉である。そして、言葉は人ではない。「文は人なり」というのはレトリックに過ぎない。言葉は人でないばかりか、人の似姿ですらない。よって、書評は紙相撲でもない。
書評は指先から生み出されるが、しかし指相撲ではない。腕を奮って書評を書いても腕相撲ではない。独りよがりの書評であっても独り相撲ではない。