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ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

一気読みした。面白かった。
ネット上では大人気で、多くの感想文が書かれている。そこにもう一つ新しい感想文を付け加えるのだから、何か独自の着眼点を示すほうがいいだろうと思い、あれこれ考えてはみたのだが、そんなものは見つからない。
いや、一瞬、見つかったと思ったこともあったのだが、あちこち巡回してみると、既に先を越されていることがわかった。

 ああショックだ。ほんとうにショックだ。どれくらいショックかというと、さっき読み終わったばかりの『ミミズクと夜の王』の内容を完全に忘れてしまうほどにショックだ。あ、でも、登場人物たちが漢字をつかって日本語でしゃべってるってことだけはおぼえてる。あれにはびっくり。
何のことを言っているのかわからない人は『ミミズクと夜の王』の45〜46ページあたりを参照すればわかるだろうが、せっかくだからかいつまんで説明しておこう。これくらいなら未読の人の興をそぐこともないだろうし。
この小説のヒロイン、ミミズクは、かつて「ミミズ」と呼ばれ、虐げられていた。彼女はその名前に「ク」をつけ、「ミミズク」と呼ばれているのだと思うことで気を紛らわせていた。それを聞いた夜の王は、「ク」は「苦」に通じることを指摘する。このエピソードでは、あからさまな形で日本語の語彙の特徴が前提とされている。作中世界で使われている言語でもたまたま日本語の「ミミズ」に相当する語と「ミミズク」に相当する語の間に日本語と同様の類似があるのだと強弁することはできるが、かなり苦しい。
ちなみに、このエピソードのすぐ後で、ミミズクは夜の王に「フクロウ」という名前をつけるのだが、この「フクロウ/ミミズク」という対比にも、日本語的な発想が反映されている。というのは、ミミズクとフクロウには分類学上の区別はない*1からだ。まあ、この件については、作中の言語でもたまたま日本語と同じようにフクロウとミミズクを弁別するのだと言ってもさほど苦しい説明にはならないだろうが。
これらの点をとらえて、『ミミズクと夜の王』の世界設定の綻びを非難することはたやすい。「……はたやすい」と言ったすぐ後に「しかし」とか「だが」と言って、反論してみせるのもたやすい。あ、えっと、この先どう続けましょう?
とりあえず今は非難も反論もせずに、ただ考えるための素材のみを提示しておくことにしよう。たとえば、こんな意見とか。『ミミズクと夜の王』の感想ではないけど、版元は同じだし、中世ヨーロッパふう(または、RPGふう)異世界ファンタジーだし、参考にはなると思う。
……適当に書いていたら、そこそこの文字数になったので、これでおしまい。