洋画と洋楽と洋食

  • 「洋画」の対義語は「日本画」
  • 「洋楽」の対義語は「楽」
  • 「洋食」の対義語は「食」

対になる言葉に使われる漢字が違っているのが面白い。
レンブラントルノワールの絵が洋画で、雪舟や応挙の絵が日本画だと長らく思っていたのだが、美術業界では専ら明治以降に日本人が描いた絵画を「洋画/日本画」と区分するらしい。考えてみれば、「洋食」も西洋料理そのままではなく、日本でアレンジした料理、たとえばカツレツ、ライスカレー、ハヤシライスなどを指すことが多い。
だが、「洋楽」には、そのような日本での受容・変形という含みはない。日本の伝統音楽も邦楽だが、西洋音楽を受容・変形した「邦楽」と区別して「純邦楽」と呼ばれることもある。それに対して、「純日本画」とか「純和食」という言葉は、もしかしたらあるのかもしれないが、聞き慣れない。
「洋食」は死語とまではいかないにせよ、やや古びた言葉で、今では「ライスカレー」同様にあまり使われなくなっている。だが、「洋楽」は今でも現役だ。「洋画」も美術コンクールの部門名としては現役だが、もうかなり前に「洋画/日本画」の実態的な差異はほとんどなくなっていると聞く。
「洋」は「西洋」の「洋」だが、「西洋」の対義語である「東洋」にも「洋」が含まれる。しかし、「東洋」を省略して「洋」と書くことはまずない。強いて一字で表すなら「亜」だが、これは「亜細亜」の略で、対になるのは「欧羅巴」だ。「亜」は「亜米利加」の「亜」でもある*1が、アメリカのことを「亜」で示すこともない。これもまた面白い。

*1:ちなみに、アフリカは「阿弗利加」なので、「亜」は含まれていない。