失意のあまり麻婆豆腐を

某サイトを見ると、小説新潮の6月号が既に発売されているかのように書かれていたので、近所の書店を何店か回ってみると、どこにも入荷していなかった。たぶん東京都心部などでは売っているのだろうが、全国的には明日が発売日なのだから、今日売っているわけはないのだった。某サイトの記述を信用したのが馬鹿だった。
失意のあまり、街をふらふらと歩いていると、陳建一がオーナーをやっている店があったので、麻婆豆腐を食べることにした。まあ、陳建一本人が鍋を振っているわけではないだろうが、もしかするとそんじょそこらの中華料理店とは違った麻婆豆腐なのかもしれないと思って期待したのだが、出てきたのはごくふつうの麻婆豆腐だった。考えてみれば、日本で広まっている麻婆豆腐は陳建一の父である陳建民が四川の麻婆豆腐をアレンジしたものなのだから、本家本元の麻婆豆腐が「ふつう」なのは当然のことだった。珍奇な麻婆豆腐を期待するほうが間違いだ。
ふつうの麻婆豆腐はふつうにおいしくて、ふつうに辛かった。食後のデザート、杏仁豆腐はふつうに甘かった。