書店で面白そうな本を見かけたときに

この世には「読めない本は買いません」と断言する人がいる。それは正しい。全くもって正論というほかはない。どうせ読めもしないのに面白そうな本を見かけたときについふらふらと買ってしまって、荷物は重く足取りも重く夕焼け小やけで日が暮れて家に帰り着いたら本棚には未読本がみっしりつまっていて、本棚の前にも未読本がどっさり積んであって、本棚の横にも裏にも上にも下にも至るところに本、本、本という状況になっているのを見てため息をつくのは、はっきりいって物事の道理が理解できない愚者の所行に違いない。アホだ、バカだ、マヌケだ、タワケだ。タワケというのは「田分け」に由来する言葉で先祖代々の身代を分割相続する愚を説いたものだという説があるが、それはどうでもいい。
ここで言いたいことはただ一つ。愚者にも一分の理があるということ、それだけだ。
積ん読にまみれた愚者とはいえ、何もむやみやたらに本を買い集めているわけではない。面白そうだから、読みたいから買っているのだ。書店で面白そうな本を見かけたときに「ああ、この本にもう一度出会う機会はあるだろうか。もしかしたら今日この場で買わなければ、一生この本に巡り会うことはないかもしれない」と思ってしまったが最後、もうたまらない。ああ、『×××××××、』なんて発売当時は何度も見かけたし、実際に手にとってみたことすらあるのに、どうしてあの時買わなかったんだ、なんという失策をしでかしたのだ、もはや復刊の見込みはないのか、富士ミスがダメなら創元推理文庫でもいいから出してくれっっ、と魂の叫びをあげながら、のたうち回るのだ。あの苦い経験は二度と繰り返すまい、今は簡単に入手できる本でもいずれは塵となって風に吹かれて飛んでいく、諸行無常、色即是空、一期一会、温故知新、一旦停止、再発進だ。
そして、ついふらふらと本を買い、荷物は重く足取りも重く(以下略)。
さて、ここで問題です。
この文章を書くきっかけとなった本は何でしょう?

ヒント1
ライトノベルです。
ヒント2
今年4月発売です。
ヒント3
思い立ってから入手するまで書店10軒以上回りました。
ヒント4
あとがきによれば続篇の予定もあるようですが……。
ヒント5
富士見ミステリー文庫ではありません。

答えは……その本を読み終わったときに。

追記

答えはここ