にぎやかなニートたちの二番目の任務

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)』に続くシリーズ第2長篇*1。前作よりもさらに面白くなっている。
前作の感想文では、アリスがあまり活躍しないのはやや残念だが、その物足りなさを埋め合わせるのが語り手の藤島鳴海だ。などとトンチンカンなことを書いていて、我ながらあきれかえった。埋め合わせも何もない、『神様のメモ帳』はどう考えたって藤島鳴海自身の物語なのだから。カバー絵がアリスだからといって彼女が主人公だと考えるのは短絡的で、「ニート探偵」または「ニーソ探偵」などといったキャッチフレーズ*2に惑わされずに素直に読めば、アリスは鳴海を取り巻く「その他大勢」の筆頭格という程度の位置づけに過ぎない。迂闊だった。
さて、2巻の感想。以下、ちょこっと内容に触れます。
1巻に引き続き、アンダーグラウンドな世界の犯罪と脱法行為が扱われている。既に起こった出来事の謎を解くことよりも現在進行形の事件に介入することに力点が置かれている。誘拐小説やコンゲーム小説のような感じ*3だ。媒体上の制約のせいか細部をぼかしているところがいくつかあるが、加筆すれば一般文芸としても通用する作品*4ではないかと思う。また、主人公の成長を描いた青春小説としても良質だ。
もちろん、「この小説を○○○○として評価するならば……」などと難しく考えずに、ただ素直にストーリーを追いかけ、キャラクターの会話の妙を味わい、ときにはちょっとした言葉の端に仕込まれたくすぐりに気づいて感心するのもいい。むしろ、そのような読み方のほうがお薦めだ。薦められなくてもたいていの人はそう読むだろうけど。
読みやすいのに厚みがあり、重いテーマもあるけれど後味は悪くない。大傑作とは言わないけれど、読み終えて本を閉じたときに、目を閉じて「ああ、いいひとときを過ごせた」と呟きたくなる。そんな小説だ。
一つだけ気になったことを書いておくと、タイトルの「神様のメモ帳」というのはどうにもピントがずれているように思う。1巻ではまだそれなりに意味があったが、2巻ではタイトルにあわせて無理にそのフレーズを出してきているような不自然さがあった。今からタイトルを変えることは事実上不可能だろうが、やはり「NEET TEEN」*5のほうがよかったのではないだろうか。

*1:この間に短篇「神様のメモ帳 はなまるスープ顛末」(電撃hp 46所収)がある。

*2:公式には「ニーソ探偵」というフレーズは用いられていない。このあたりが発祥か。

*3:ただし、厳密にいえば誘拐でもなければコンゲームでもない。

*4:念のために断っておくが、別にライトノベルが一般文芸に比べて劣っていると言いたいわけではない。

*5:これは作者の公式サイト名に使われている