Spiegelfuge

かってちくま文庫で企画されていたと仄聞するそれは、ある不幸な偶然によって実現の可能性が限りなく低くなったようだけど、どこかで引き取ってもらうわけにはいかないものだろうか。ぶっちゃけた話、今ある程度の水準の『伝奇集』とか『アレフ』の翻訳しか我々が持ってないというのは日本文化の恥じゃ。ロバート・バートンの原著をちょっとでも覗いていれば「二十四通の手紙の変奏」なんていう阿呆な訳は出てこないはずだし、「鏡を通って(Through the looking glass)」とか「シャム双生児の神秘(The Siamese Twin Mystery )」とか、あまりに非ボルヘス的な訳が巷には横行しておる。(一部は最新の訳では直っている。また、英訳からの重訳とはいえ、晶文社版の『異端審問』はけっこういい線いってると思う。) これも伝え聞くところによると、T教授などはプレイヤッドの二巻本仏訳全集でわざわざ読んでいるそうではないか。