フェル博士は太っているがツイスト博士は痩せている

久々に海外ミステリを読もうと思い立ち、各所で評判のいい『狂人の部屋』を手に取った。アルテは毎年1冊ずつポケミスから訳書が出ていて、最初の頃はちゃんと読んでいたのだが、だんだん海外ミステリを読むのがしんどくなって『狂人の部屋』の前の2冊は未読になっている。ということはアルテを読むのは3年ぶりということになる。
前々から、ツイスト博士はあんまりカーの名探偵に似ていないなぁ、と思っていたのだが、今回はじめて体型が全然違うことに気づいた。ツイスト博士が長身痩躯だということはたぶん既刊本にも書かれていたはずだが、読み飛ばしていたのだろう。迂闊だった。
名探偵の容姿はともかく、今回は特に「フランスのカー」らしい雰囲気だった。冒頭のベタなラブロマンスから始まって、怪しげな伝説、開かずの間、謎の怪死、蘇る死者などなど、カーらしいモチーフが随所に登場する。密室殺人は発生しないが、乱歩なら「密室以上の不可能事」とでも言いそうな奇妙な事件がてんこ盛りで、読者を飽きさせない。
しかし、発端から中盤までの展開がいくら巧みであったとしても、ミステリの要はやはり終盤、謎解きにある。実は、今ちょうどツイスト博士が事件を解決するシーンの直前*1まで読んだところで、まだ全部読み終えてはいないのだが、解決篇を読むのがもったいないような待ち遠しいような、そんな気分だ。ああ、こんな気持ち、もう何年も忘れていた。
さて、一休みしたところで、今からいよいよ名探偵の快刀乱麻を断つが如き推理を拝聴することにしよう。
諸君、また会おう!

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