プルシアンブルーの空

昨日、神戸市立博物館特別展 西洋の青を見てきた。非常に素晴らしかった。
博物館の特別展といえばよくありがちなのが「○○美術館の至宝」という類のもので、こういう展覧会はたいてい新聞社か放送局がバックアップしているので、大々的に広告を打っていて人の集まりもいい。
それに対して、この「西洋の青」などは博物館の自主企画展で、マスコミ関係の後ろ盾がないので宣伝もあまり行き届いていないし、たぶん招待券のばらまきもやっていない*1ので、夏休み中の土曜日だというのに、あまり人が入っていなかった*2。残念なことだ。
では、なぜこの展覧会を見に行くことにしたのか。話は一週間前に遡る。先週土曜日に横浜中華街へ行った話を日記に書いたところ、コメント欄で「神戸中華街にも椰子の実ジュースはあるのか」という質問を受けた。それをきっかけにして、最近全然神戸中華街へ行っていなかったことを思い出し、本当に椰子の実ジュースがあるのかどうかを確かめるために訪れることにしたのだ。
神戸市立博物館は、椰子の実ジュースのついでだった……と言ってしまうと身も蓋もないが、何が何でも行ってみたいと思っていたわけではないのは事実だ。
せっかく神戸に行くのだからどこか博物館に寄ってみようと思い、調べてみたところ、兵庫県立美術館川村記念美術館所蔵 巨匠と出会う名画展というのがよさそうだったのだが、中華街から兵庫県立近代美術館まで歩くと疲れるし、あの安藤忠雄設計の建物の中に入るとさらに疲れる。川村記念美術館にはそのうち一度は行ってみようと思っているので、楽しみは後に取っておこう。そこで、兵庫県立美術館はやめにした。
で、神戸市立博物館の「西洋の青」だ。
純粋に美的見地からみて優れているとはいえないだろうが、社会通念や常識から少しずれたヘンなものに興味があるので洋風画は以前から気になっていた。今年はじめに府中市美術館で開催されていた海をこえた出会い 「洋画」と「洋風画」は残念ながら見に行けなかったが、京都国立近代美術館揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまにはなかなか面白かった。翻ってみれば、2003年に国立科学博物館で見た江戸大博覧会 〜モノづくり日本〜*3の頃から、そういうものに関心を持ち始めていたのだろう。
そんなわけで、この展覧会はツボにぴったりはまって、非常に楽しめた。
こんなことに興味がある人がどれくらいいるのかは知らない。たぶん、「ただ素直に美しい絵を見たい」または「有名な美術作品をじかに見てみたい」という人に比べればずっと少ないだろう。だが、興味は啓発されるものだ。多少の好奇心さえあれば、これまで全く関心がない人でも、きっと何かが得られるだろう。
さあ、想像してみよう。時代も画題も異なる絵画を、そこに用いられている「青」の素材という一点に着目して構成された展覧会を。
さあ、想像してみよう。出品作品の解説に必ず「藍」とか「プルシアンブルー」などと青い文字で附記されている展覧会を。
さあ、想像してみよう。絵画と帳簿が同等の資格をもって展示されている展覧会を。
さあ、神戸市立博物館へ行こう!

*1:大阪駅前の金券ショップで探してみたが、全然見つからなかった。

*2:ただし、「神戸市立博物館にしては」という前提つき。マイナーな博物館だと、企画展でも貸し切り状態ということがよくある。

*3:誤解する人はいないだろうが、これは美術展ではなく、科学技術展だった。